after
「……」
 シーツを目元まで引き上げているリナリーと一瞬目があって、アレンの視線が泳ぐ。いかにもどういう態度を取っていいか判らないみたいなそんなところが彼の良さだとリナリーも思っている。
「あの……大丈夫……」
 なわけはないですよね、ハハハと虚ろに嗤う。
「うん、ヒリヒリする」
 言ってみるとアレンがビックリしたように目を見開いて、かぶっているシーツをめくろうとする。
「大丈夫ですか? どこ?」
「見せられるわけないでしょー、もう!」
 困ったように言われて、アレンの方が赤面する。
「その……ごめんなさい。……師匠が師匠だったからボク色々と……」
「えっ!?」
 大声で叫ばれて、アレンの方がビックリする。
「え?」
「アレンくんて……実は経験豊富?」
「そんなことあるわけないじゃないですかぁ」
 がっくりと首を垂れて、それから思い直したようにリナリーの顔を見下ろす。
「……師匠が師匠だったから、色々とあることないこと吹き込まれてる気がするんですよね。だからどういうのが正しくて間違ってるのかとか……あんまり自信なくって……」
 だから、ごめんなさい。ともう一度頭を下げる。
「その、大丈夫だよ? ちょっと痛いけど、ちょっとだけだし、初めてはみんなそうらしいし。イヤじゃなかったよ?」
 リナリーが身を起こして、アレンの顔を正面に見ると、視線が間近で絡み合う。どちらからともなく近づいて気がつくと額がぶつかって……そのまま口づけた。軽く唇が触れ合うだけのキスを、最初は一瞬で離れて、もう一度。視線を絡めたままで焦点は近すぎて合わないけれど、もう一度。今度は少し長く、啄むような優しいキスを何度も繰り返す。
「……リナリー」
「うん」
 近くで見つめ合ったまま少し笑いあって。
「アレンくん、ごめんね?」
 なにが? とは聞かなかった。リナリーの表情が笑っていたから。
「コムイさんのこと? だよね?」
 自分で言っておいて、ズーンと暗くなっているアレンだ。
「アレンくんはコムイ兄さんのお気に入りだから、苛められるかもね」
 クスクスと笑っているのは、それもコムイの愛情表現だと知っているからだ。リナリー自身アレンのリアクションが可愛くてつい苛めてしまいたくなる気持ちは判らなくない。
「うっ……うれしくない……」
 ふふ、と笑うリナリーの唇を掠め取る。びっくりした表情に気をよくして。
「お返しです。ていうか、これからのことを考えたらこのくらいもらっとかないと」
 オス! と自分に気合いを入れているアレンにもう一度リナリーが笑って。
「アレンくん、大好きだよ」
 肩に顔を埋めて呟いたから聞こえなかったかも知れない。
「その……リナリー」
「ん?」
「そろそろ……なにか着てくれないと」
 理性が持ちそうにないです! となぜか口調だけはきっぱりと、でも表情は困ったような情けない顔をしている。



「あ……」
「どうかしましたか?」
 律儀に向こうを向いたままで聞いてくるアレンに。
「ううん、ちょっと出血……」
「ええーっ!?」
「ちょっ、やだこっち見ないでってば!」



 振り向いてしまったアレンがどうなったかはまた別の話。


fin
えーと。afterです。「その後」ですね。なんの後かって、つまり「初めて」の後なわけなんですが(笑)
いつもなら「初めて」に至る過程が好きな私ですが、リナリーちゃんとアレンくんに限って言えば、どうやってあのアレンくんがそういうシーンに持ち込むのかまったく想像もつきません! で、終わった後から……なわけですが。
あー、なんか書き足りない。もっと可愛くいちゃつく二人が書きたい〜! のできっとまだしばらくはこの二人を書いてると思いますよ。