世界は誰のモノ?
「あーははははっ」
「フッ……はーはははははっ」
 ふたり、いや、一人と一匹の笑い声が青い空の下に響き渡る。
「えーっ……と」
 僕はどう言っていいのかわからず、言葉に詰まってしまう。
「どうしたの? レオくん?」
 たった今まで低い声で高笑いしていたサワーがいつものキャルンとした声で僕を覗き込む。
「えーっと、そのォ……これからどうすればいいのか、なぁ……なんて」
 世界征服! と高らかに言い放った彼女をどう説得……というか、宥めたらというか。
「あの、とりあえず立ち話もなんですから、お茶でも飲みませんか?」
 いつの間に用意したのか、そこには白いテーブルと椅子、テーブルの上には赤と白のチェックのテーブルクロス。そしてメイドさんが淹れてくれた紅茶と手作りらしいパウンドケーキが切り分けられていた。
「わーい メイドさんのケーキだぁ」
 ケーキに喜んでテーブルに着いているサワーはいつも通りで、先刻までのは幻なんじゃないかって気までしてくる。
「でね、でね? 私はぁ世界征服するからぁ、レオくんは王子様ね?」
 首を少しかしげて下から見上げるようにするサワーは限りなく可愛くて、そのセリフの中身と口調がちっともマッチしてない……気がするんだけどなぁ。
「お、王子様って……それに世界征服なんてダメだよ、サワー」
「むぅ!」
 ほっぺたを膨らませて子供のように不服を口にする。
「だってだってぇ、もう封印も解けたし、黒色破壊光線も使えるようになったしィ」
「では、まずここに城を建てる、というのはどうですか?」
「城?」
「城!」
 メイドさんの提案にサワーとにゃごにゃご先生の声が重なる。
「そうです。世界征服をするのに城も構えてないのはなんだか淋しい気がしますし」
 ブーッ! 僕はメイドさんの発言にびっくりして思わずお茶を噴き出してしまった。だって、なんとなくだけど、メイドさんは世界征服なんてことには興味がないだろうと思っていたから。
「いい響きやな〜、城、城でっか」
「お城欲しい〜 ていうか、むしろ必要!
 サワーの、小さい声で低く呟かれる物騒なセリフはとりあえず聞こえなかったことにして、お城なんてこんなところに建てていいのかなぁ? とメイドさんをチラッと見ると、僕の不安をわかってくれたのか大丈夫ですよ、と小さく囁いてくれる。つまり?
「でもいきなりお城と言っても難しいですから、まずは今晩泊まれるくらいの小屋を造りませんか?」
「そ、そうだね、こんななんにもないところで野宿とか、風邪引いちゃうかも知れないし」
 慌ててメイドさんの提案を褒めるとサワーもそうかも、と首をかしげている。
「そ、そうだよ! とりあえず、夜露だけでも凌ぎたいし……サワー、なにか材料とかになりそうなものがないか上の方から見てきてもらってもいいかな?」
「うんっ、レオくんの頼みならなーんでも聞いちゃうよ〜
「……お嬢」
 にゃごにゃご先生がサワーの肩の辺りで大きくため息をついた。



「な、なんとかなるものだね」
 夜の帳が降りる前になんとか僕たちは小屋……のようなものを作って、とりあえず夜露だけはしのげる状態になった。
「サワーさんが近くに森を見つけてくださったからですね」
「ふふふん」
 メイドさんに褒められたサワーが胸を張る。
「そうだね。サワーのおかげかも。それとメイドさんがベッドを作ってくれたし」
 森の草や葉を敷き詰めた上にテーブルクロスを掛けただけの簡易ベッドはひとつしか作れなかったけど。小屋も、森から木を切り出すのはいいけど釘もなにもないのできちんと組み立てることが出来なかったから、掘っ立て小屋程度にもなっていない。それでも風は遮ることが出来たしとりあえずは充分だろう、と思ったんだけど。
「その……」
 ひとつしか作れなかったベッドに3人で横になっている。両脇に密着するようにサワーもメイドさんも身体を擦り寄せてくる。
「レオくーん」
「あ、あの……もうちょっと、は、離れて……」
 密着、というか、サワーは今にも膝が僕のこ、股間に触りそうなくらいに脚を絡めてくる。これは、誘われているんだろうか、と考えかけてプルプルと首を振る。だってサワーだけじゃなくてメイドさんもいるんだし、そりゃ二人とも、や、やっちゃってるわけなんだけど。でもそれはどっちも僕と二人きりの時だったわけだしっ!
「でも、レオくん、もうこんなになっちゃってるよ?」
 少し恥ずかしそうにしながら、でもサワーは的確に少し膨らみかけてしまっているところをズボンの上から指でススーッと撫で上げた。
「うわっ! だ、ダメだよ」
 あわててサワーの手をどけようとしたけど。
「ご主人様……」
「め、メイドさん」
 反対側からメイドさんが僕の手をとって、胸の膨らみに押しつけた。
「あ……その……いい、の?」
 コクンとメイドさんがうなずいて、サワーはさらに手のひらを押しつけるように刺激しだした。
「ご主人様、ご奉仕いたしますね?」
 メイドさんが身体をずらしてサワーの手で大きく育ってしまったソコに顔を近づける。ズボンをくつろげるとそっと先端にキスをする。
 サワーの手が離れて、上から僕を見下ろすのへそっと手を伸ばして頬を撫でてあげると、サワーの顔がゆっくりと近づいてくる。
「レオくん」
 サワーの切なそうな声に、我慢できずに舌を彼女の口腔内に潜り込ませる。深いキスを続けながらサワーの胸のふくらみに手を伸ばすと、抑えきれないため息のような声が漏れてくる。
「ふ、ぁ……レオ、くぅん」
 サワーが少しだけ身体を起こしてしまったのでキスは離れてしまったのに、まだ水音が響いてくるのはメイドさんが自らの唾液を啜るようにしてボクのを刺激しているからだ。
「ンっ」
 我慢できずに下から突き上げるようにするとメイドさんの少し苦しそうな声が耳を擽る。気を抜くと持って行かれそうになるのをグッと腹に力を入れてやり過ごしてサワーを抱き寄せる。下を向いているせいで柔らかく揺れる乳房に顔を寄せてチュッと音を立てて先端のピンクの部分にキスをすると震えるような吐息が頭の上から零れてくる。さらに手を伸ばして短いスカートの中に忍ばせる。
「もう濡れてる」
「ヤ、ん」
 指摘されたことが恥ずかしいのかサワーが身を捩るけど、薄い下着の上からでもはっきりわかるくらいそこは濡れそぼっていて。
「あ……ご主人様、また大きく……」
 ドクン、と脈打ったのが自分でもわかった。メイドさんの狭い口の中で窮屈なくらいに締め付けられている。
「っ! メイドさん……も、もう……」
 空いた方の手でそっとメイドさんの頬を撫でると、ようやく顔を上げてくれる。
「その……上に、乗ってもらってもいい、かな?」
「ご主人様の上に、ですか?」
「そう……ダメならいいんだけど……その」
「いえ、では……失礼しますね……っっ」
 そっとエプロンドレスの裾を持ち上げるようにして腰がゆっくりと降りてくる。先端が何度か滑るのも心地いいけど、早く入りたくて堪らなくなる。
「ああっ……ん」
 半分くらいメイドさんの中に挿ったところで下からズンっと突き上げる。サワーの中に潜り込んだ指も一気に奥まで突き立てた。
「あっ、く……あぁぁーーーー!」
「んんぅ、ーーっっく」
 少し苦しげな、もしくは気持ちよさそうな声が耳朶をくすぐる。二人の熱くて狭い襞が蠢くように締め付けてくるのを指と僕自身で痛いほどに感じる。
「サワー、もう少し……身体倒して、そう」
 柔らかい乳房を口唇と舌とで感じながらメイドさんがゆっくりと動くのにあわせて指でサワーを刺激する。中に突き立てた指で掻き回しながら同時に小さな肉芽を捏ねると高い声が漏れる。
「あっ……ヤ、レオくっ! んぁあ」
 キュッと奥の方から締め付けられて、ビクビクっと断続的に続いたあとしばらくしてサワーが身体を横たえる。閉じた目蓋にそっとキスするとくすぐったそうに微笑んでいる。
「メイドさん、ゴメン僕ももう我慢できそうにない、かも」
「あ……ご主人様、私も……」
 ユルユルとした刺激だけでも充分に気持ちいいけど、もうそれも限界で。いつもよりも興奮してしまっている気がするのは、きっと気のせいじゃない。
 体勢を入れ替えてメイドさんの上に正常位で覆い被さるようにしてラストスパートをかける。欲望を叩きつけるように腰を前後させると、メイドさんに寄り添うように横になっていたサワーがメイドさんの白い胸に手を伸ばした。
「あ……サワー、さん」
「ん」
 サワーの細い指がメイドさんの胸の膨らみを撫でて、その先端の紅い果実を摘み上げる。それはものすごく淫靡な光景で、ドクンと血液が一ヶ所に流れ込むのが分かる。
「あ……また大きく……」
「クッ」
「んっっっ」
 メイドさんの一番深いところに飛沫を浴びせると、ググーっと其処が狭まって、それからギュッギュッと最後の一滴まで搾り取ろうとするかのように痙攣して、メイドさんもイッたことがわかる。
「は……ァ、なんか、すごかった」
「ね、レオくん、私も……」
「サワー」
 復活したサワーが、顔を近づけてくる。キスをして……それから二人を相手にもう出なくなるんじゃあ……と思うくらい励んで、気絶するように眠りに落ちた。



「ん……」
 ボーっとした頭を振るようにして身体を起こすと、サワーがすぐ横で眠っている。
「おはようございます、ご主人様」
「あ、おはよう、メイドさん。相変わらず早いね」
 そう言うと彼女は苦笑して早くはないです、とコップに入った水を差しだしてくれる。
「もうお昼過ぎてるんですよ」
「え? そうなの?」
「はい……ちょっと昨日は張り切りすぎましたね」
 少し頬を染めてそんなことを言うメイドさんはメチャクチャ可愛い。
「そ、そう、だね」
 二人して真っ赤になって、しどもどしてたら、サワーが身動ぎしたのでようやく呪縛が解ける。
「ん……」
 起きるかと思ったけど、なんだか起きそうにもない。寝息は規則正しくて、寝ていても可愛い。
「サワーさん、まだ起きなそうですね」
「そうみたいだね」
 そっとサワーの横から身体を離してベッドを下りるが目を覚ましそうな気配もない。
「ご主人様だけでも昼食先におとりになりますか?」
「うーん、面倒じゃない?」
「いいえ、ご主人様のために仕事をさせて頂くのは私にとって喜びですから」
「実はお腹ぺこぺこなんだ」
 腹をさするようにして言うと、メイドさんがクスッと笑う。考えてみれば昨日の夜食事をしてからあんなに激しい運動をして、朝食を摂ってないんだからお腹が空いて当たり前だ。メイドさんが作ってくれた食事を食べながら、これからのことを考える。
「サワー、世界征服なんて物騒なこと、忘れてくれるといいんだけど……」
「忘れるのは無理かも知れませんが……まずは城を立派にするということでこの場所にとどまっていれば」
 でもいずれはサワーの力で近隣に攻めていくってことになってしまうのでは……と思って暗くなる。
「建物が立派になっても、サワーさんやご主人様の忠実な家臣となってくれる者がいなければ城とは言えないですから……忠実な家臣を得るためには、近隣の方々ともうまくやっていかなくてはいけません」
「そ、そう、だよね」
「ご心配さならなくても大丈夫ですよ」
 そう言ってメイドさんがニッコリと笑ってくれる。
「そうだね、なんでかサワーはボクの言うことよりメイドさんの言うことなら聞いてくれるみたいだし、頼りにしてるよ」
 本当にサワーがぶっそうなことさえ言わなきゃ気候も穏やかそうなここは三人で暮らしていくのにいい場所だと思うんだけどなぁ。



「ね、レオくぅん
 サワーが甘えた声ですり寄ってくる。
「うん、なに?」
「そろそろォ、領土を広くしたいなって思うんだけどォ、どーお?」
 ニッコリと微笑むサワーは、それでも僕にはいつもと変わらない口調で。
「でも、サワーさん」
 メイドさんが横から助け船を出してくれる。これもいつものことだ。
「サワーさんなら、確かにお隣を攻め落とすこともできると思いますけど、でもサワーさんの留守にもしどこかから攻められたらこの城とご主人様をお守りするのは私には難しいかと」
 淡々とした口調でメイドさんがサワーを説得する。
「どこからか攻められたら? ってどこも攻めて来たりしないでしょ?」
「でも、サワーさんがいない時を見計らわれたら」
 メイドさんの言う「もし」はまずありえないことだとは思うけど、それでもサワーの視線は揺らいでいて。
「そ、そうね。レオくんがいない城じゃ意味がないわね!」
「レオくんのために早く世界征服したいんだけど、こんな狭いお城でごめんね?」
「う、ううん、充分だよ! 世界征服なんて、そんな大それたことしなくても……」
 実際、最初にここに来たときから考えると何年かで比べものにならないくらい立派な、本当にお城と呼べるモノになっている。今では家臣と呼べる人たちも大勢いる。
「お城もこれ以上大きくなると、私の手が行き届きませんから」
「ムムゥ。でも、メイドさんは専用コックさんだから、私とレオくんのご飯だけ作ってくれたらそれでいいのに」
「いえ、そういうわけには」
 これも何度か繰り返された会話だ。規模が大きくなるにつれてメイドさんの負担が増えてしまう。が、やらなくてもいいと言ってもこれはメイドさんの習性なのでしかたないかと思う。それなら、これ以上大きくしない(させない?)いいわけにもなるし。
「それより……」
 メイドさんがサワーを視線で促す。
「うん」
 何百人も抱えるお城に住むようになっても、結局僕等の寝室はずっと一緒だった。最初は分けたんだけど、二人が僕の部屋で何度もバッティングしてしまって……二人で争うように僕の部屋に来るのならもういっそのこと寝室は一つにしてしまえという感じだ。
 広いベッドの上で、二人の顔が重なるようにして僕の股間に埋められている。二枚の赤い舌が絡み合うように行き来している。
「ん……」
 おしゃべりが終わると同時に部屋の空気がねっとりとした淫靡なものに変わった気がする。快感が背筋を這い上る。
「ア……」
 そろそろ射精そうだと伝えるまでもなく、サワーとメイドさんは争うように口に含もうとするが、ひとつしかないものを分け合えるわけでもなく……結局サワーに譲った形でメイドさんが少し伸び上がるようにしてキスを求めてくる。
「ンッ」
 サワーが奥まで含んで激しく攻め立てる。水音が恥ずかしいくらいに部屋中に響き渡る。「サワー、そろそろ……」
「……」
 上目遣いに見上げられて、目で、いいよ、と促される。そんな仕草にゾクッと背筋が震えた……気がする。サワーの喉奥に白い粘液を叩きつけると、しばらくしてコクンと飲み干すのが判った。
 メイドさんにしろサワーにしろ、口でやる時には必ず飲まれてしまうのはなんだか気恥ずかしい。美味しいモノではないと思うのに、こっちの世界に戻ったから、前みたいに「必ず妊娠」してしまうエキスを使うと限りなくメイドさんとサワーが生まれてきてしまうことになるからってことで……そ、挿入する時にはゴム製品を使用しているんだけど(^_^; それ以外なら「妊娠」はないってことで、街で開業しているクスシさんから購入して、エキスも使っている。
 さすがに毎日二人がかりで搾り取られるから濃くはないだろうけど、それでもアレを飲まれてるんだと思うと妙に興奮する。
「ご主人様……」
「レオく、ん」
 二人の甘えたような声が身体にまとわりついて、なんだかそれ以外のことが考えられなくなりそうだ。
「ん、サワー、メイドさんの上に……」
 言い終わる前に、メイドさんもサワーも僕の意図を理解したのか、ポッと頬を染めて、メイドさんが仰向けになった上にサワーがメイドさんを抱きしめるようにして重なる。
「いくよ?」
 大きく脚を開いて重なり合った二人の間に身体を進める。上下に重なった二つの泉の間を何度か滑らせるようにすると、切なそうにふたつの躰が揺れる。
 ズンっ
 サワーの中に奥まで突き入れると、予測していなかったのかキューッと締まって、同時にクーンと喉の奥から小さな声が漏れる。軽く1〜2度抜き差しをして今度はメイドさんの中に。
「あっ」
 拓かれて、またすぐに抜かれてしまったのが切ないのかサワーから落胆の声が零れるが、同時にメイドさんからは充足のため息が聞こえる。
 サワーを突きながらメイドさんの乳房を揉み、メイドさんの中で揺れながらサワーの背中に口唇を滑らせる。何度も二人の間を往復すると焦らされるのが切ないのかどんどん二人の息が荒くなってきて、僕を離すまいとするかのように締め付ける。
「そろそろ……」
 もうそろそろ僕も限界だった。下になっているメイドさんに激しい抽挿を繰り返しながら、身体を起こしてサワーの泉を掻き混ぜる。中指と人差し指の二本をまとめて抜き差しすると時々サワーが快感に耐えきれないのかしゃくり上げるようにする。
「ここ?」
 その時々、が手を動かしたときにとある箇所に触れてしまうのと一致してるのに気づくのにはそんなにかからなかった。
「あっヤッ! ダメっっっ」
 親指で押さえるようにしながら中と外から揉みほぐすように指を動かすと、キューッと奥の方から襞が狭まってきてドクン、と痙攣する。
「ク、ーーーんっ」
 何度か膣内を波打たせてサワーが脱力する。
「あ……ご主じっ、わ、私、もっっ」
「メイドさん、僕も、そろそろ」
 サワーの中を宥めるように動かしていた指を引き抜いて、ラストスパートをかける。ググッと奥にねじ込んだ時にメイドさんが達したのと同時に僕も二度目の精を放っていた。



「考えたんだけど」
 少し遅めの朝食の席。大きなテーブルに僕とサワーが並んで座ると、そのテーブルの角を挟んで僕の隣にメイドさん。いつものようにメイドさんの手料理を食べ終えたところだ。
「なになに?」
「向こうから帰ってきてから何年か経つのに、僕はまだ師匠に挨拶もしてない。エリナが帰ってるだろうから僕の消息はわかってるとは思うんだけど」
 そこで一度言葉をくぎって二人の反応を見る。
「そうですね」
 メイドさんが小さく頷いてくれて、僕の言いたいことを判ってくれたみたいだ。
「で、やっぱり一度ごあいさつくらいはしておきたいな……と」
 サワーのご機嫌を伺うような形になってしまうのは、せっかく城としての体裁を整えてきたここを長期にわたって離れることになるからだ。
「ええー? どうして? 向こうがくればいいじゃない?」
 臣下なんだし、とボソッと言ったのは聞こえなかったことにしておいてあげよう、うん。
「でも、師匠は僕がここにいるって知らないわけだし、魔物使いとしてここまで育ててもらった恩もあるし」
「……レオくんが、そこまで言うなら」
「お嬢!」
 にゃごにゃご先生がサワーになにか言いたそうに声を掛ける。
「僕の故郷まではずいぶんと遠い、苦しい旅になると思うけど……サワーとメイドさんがついてきてくれれば大丈夫だと思うんだ」
「そうですね……空を飛べるサワーさんだけならそんなにはかからないでしょうけど、順調にいっても1年以上はかかると思います」
「サワーが一緒に来てくれれば、心強いけど」
 実際大陸を横断するようなもので、途中どんな困難があるか知れない。本気で世界征服、なんて言い出すくらいレベルアップしてるサワーが一緒ならどんなモンスターが現れても心配はいらないと思う。
「うん、レオくんとメイドさんは私が守ってあげる♪」
「お嬢! 城は、城はどないするんや?!」
 にゃごにゃご先生の悲痛な声が響く。
「ええー?」
 困ったような表情のサワーは、でもたぶん僕についてきてくれる、と確信に近い思いがある。
「師匠にあって挨拶して、色々教えてもらいたいこともあるし、はっきり言っていつ帰ってこれるかわからない」
 サワーを正面から見つめる。
「この城は、ここの人たちに治めてもらおう」
「……」
 一瞬でサワーの表情が険しくなる。しまった、言い方がまずかった?
「サワーさん」
 メイドさんが立ち上がって、サワーにこそっと何かを耳打ちした。
「……」
「……」
 サワーの険しい表情が少しだけゆるんで、それから少し驚いたような顔になる。
「ね?」
「うん」
 ニッコリとメイドさんが笑いかけるのへ、サワーが微笑み返す。
「ここはもういらないし、レオくんたちと一緒に行く」
「お嬢〜」
 にゃごにゃご先生はサメザメといった調子で泣いている。もうサワーの決定は覆らないと思ったんだろう。
「ありがとう! サワー、メイドさん!」
 二人を抱きしめるようにして感謝を伝える。だって、どう考えても僕一人で故郷に戻ることは無理だからだ。
「では、準備をして出発はいつにしますか?」
「できれば、明日にでも……」
 まだ朝食が終わったばかり、大きな荷物が必要な訳じゃないから、たぶん大丈夫だと思う。問題はここを明け渡すための引き継ぎだけだけど、もともと僕やサワーがなにをしていたって程でもないのでそれほどにはかからないだろうとも思っている。
「じゃあ、私、お弁当を作りますね? なにがいいですか?」
「えっとね、えっとね
 さすがメイドさん。サワーの扱いを心得てる、と感心した。



「行こっ、レオくーん♪」
 サワーが僕の腕をとる。
「うん、じゃあ……行こうか」
 立派になった城を振り返る。もとはなにもないただの野原だった。そこに掘っ立て小屋を作ったのが最初。今は送り出してくれるみんながいる。そんなみんなともお別れだと思うと少し淋しいけど……でもずっとここにいるときっと迷惑を掛ける。というか、未だに世界征服をあきらめていないサワーが、確実に問題を起こすだろうと思うから。
「ところで、メイドさんは昨日サワーになんて言ったの?」
 世界征服の足掛かりにするための城を手放すことをサワーがあんなに簡単に納得するなんて。
 フフ、とメイドさんが笑う。
「お城や領地を治めるための雑事に追われないで、最初に作った小屋みたいに小さな可愛い家でご主人様と3人で暮らすのってよくないですか? って言ったんです」
「そうなんだ?」
 なんでそれでサワーが納得したのか今ひとつわからないので、首をかしげながら言ったら、メイドさんがいたずらっぽく笑う。
「新婚生活みたいじゃありません?」
 小さな家に可愛い家具を揃えて、ままごとみたいな生活はサワーの好みだと思ったと言う。
「メイドさんも、そういうのがいいの?」
「……私はご主人様にお仕えできれば、それで」
 少しはにかんで頬を染めるメイドさんに、僕までなんだか恥ずかしくなってしまう。
「もう〜ふたりとも遅〜い!」
 少し前を行っていたサワーが飛んで戻ってくる。
「ごめんごめん」
 メイドさんと顔を見合わせて、そしてサワーに手を差し出す。
「行こう?」



 ふたりが僕によせてくれる思いがうれしい。どうしたら僕も彼女たちのことをこんなに思っているって伝わるんだろう。とりあえず、すべての思いを込めて、僕は彼女たちをギュッと抱きしめる。



fin
ギャルズーです。サワーたんとメイドさんです。なんか、メイドさんが黒く……(笑) でもその分サワーは可愛くなった気がするんです、が……いかがでしょうか?
中途半端なオチで申し訳ない〜。でもどうしてもサワー(バッド?)エンドの続きものはやってみたかったのです。あれ、私的には全然バッドじゃないんですが(笑) サワーたん可愛いよね! はぁはぁ
複数プレイを書いたのは初めてじゃないですが、でもどっちも比べられないくらいに好きっていうのは初めてでした。レオくんヘタレで好きvv うまく転がしちゃうような子じゃなかったからはまったんだろうなって思います。そいえば、ポロンくんもこんなタイプだった気が(笑)