スズモリの若頭領観察日記
某月某日
 今日初めての襲撃を受けて甚大な被害を被った僕たちは、次期頭領タカマル様を屋敷に迎えることになりました。タカマル様は背も高くて男の僕から見ても格好いい方で、ちょっと頼りない部分もあるけれど、過去から来た閃忍のハルカさんが慕っているほどのお方です。僕も微力ながらせいいっぱいタカマル様にお仕えしたいです。

某月某日
 本格的な戦闘に備えて、タカマル様とハルカさんの龍輪功を行うことに。アキラさんから説明を受けてタカマル様は動揺したのかワタワタとされていて、なんだか僕まで真っ赤になってしまった気がします。だって、なんだかやっぱり……その、恥ずかしいし。いえ、必要なことだし、大事なことだというのも判ってるんですが。

某月某日
 日に日にハルカさんの傷が増えているみたいです。特別な力をタカマル様から授かっているとは言っても、やはりハルカさん1人では多勢に無勢。僕ももっとお役に立てるといいんですが。

某月某日
 ついに体調を崩してしまったハルカさんの代わりにナリカさんが戦闘に出ることに。元々ナリカさんは閃忍第1候補だったし、やっぱり清元様のこともあるんだろうと思います。ハルカさんが回復されたら、少しでもお2人の負担を減らせるように、僕たち後方支援ももっと頑張らなくては。

某月某日
 ここのところピースポイントが高いせいか、それともお天気がいい日が続いているからか、ナリカさんのご機嫌がいいみたいです。朝食を作るお手伝いをしてる時に、「スズモリはもっと食べて大きくならなくちゃね!」とデザート用のいちごを僕の口に放り込まれて、ちょっとびっくりしてしまいました。

某月某日
 ハルカさんとナリカさんの連携も日増しに良くなってきて、いよいよ城攻めをと皆の士気も高まっています。タカマル様のご決断を待つのみですが、やはりたったの2人で敵地へ乗り込むのを心配していらっしゃるご様子。女性を前線に出して後方支援しかできないのを歯がゆく思っていらっしゃるみたいです。

某月某日
 鍛錬の成果かハルカさんナリカさんも怪人くらいでは相手にならないくらいに強くなってきていらっしゃるみたいで、いよいよ明晩の城攻めをタカマル様が宣言なさいました。最近のタカマル様は若頭領としての自覚なのか、以前のような頼りなさというか、子供っぽさはあまり感じられなくなってきています。大人の男の人に成長してるっていうことなのか、格好いいけど、ちょっとだけ……ほんのちょっとだけなんですけど、淋しいような気もします。

某月某日
 無事城を攻め落とし、四天王の一角大蛇丸を倒した翌日。僕たちはつかの間の平和を味わっています。ホントのつかの間だってコトは知っているんですが

「あ、タカマル様! 昨日はお疲れ様でした」
 渡り廊下でタカマル様をお見かけしたので僕はペコリと頭を下げる。
「おお、スズモリもお疲れさん」
 タカマル様の大きな手がポン、と僕の頭に触れる。甘い香りがフワッと広がって一瞬え? と思ったけど、香りの元に思い至って僕はカーッと頬が火照ってしまう。
「ん? どうした? なんか……赤くないか? 熱でもあんじゃないだろうな」
 タカマル様が僕の顔を覗き込むようにして顔を近づけてきて……ますます真っ赤になってしまった僕は視線を彷徨わせてしまう。
「だっ大丈夫です。なんでも、ないですから」
「大丈夫って顔じゃないぞ? スズモリも大事な戦力なんだから、体調悪いなら早めにちゃんと休んで早く治さないとダメだろ」
 心配そうに眉根を寄せるタカマル様の顔がすぐそこにある。
「あ……の、ホントに……大丈夫、です。体調が悪いわけじゃなくて……」
「ん?」
 話し始めた僕の目をまっすぐ見つめてくるタカマル様に、僕はさらに頬が朱くなるのを感じる。
「あっ……と。その、タッタカマル様から……じょ……女性のにおいが……」
「え……ニオう? 自分じゃわかんないけど」
 クンクンとタカマル様が自分の腕を持ち上げて匂いを嗅いでいる。
「そ、そんなに匂うってことは……その、龍輪功……です、よね」
「ああ。初めての城攻めで勝手がわからなかったってのもあるんだが、けっこうハルカさんが消耗しちゃったんだよな」
 ……ということは、タカマル様はハルカさんと、そっ、そう言うことをしてきたところだってことで……
「って、スズモリ、その顔は反則だろ?」
「すっすす……すみません!」
 龍輪功は必要なことで平和のためにとても大切なお役目なのに、僕はなんて目でタカマル様を! まだ少し熱を持った頬をパチンと叩くと、僕はその場を駆け出してしまった。
「あっおい! スズモリ!」
 タカマル様の声が背中に聞こえてきたけれど、恥ずかしさと居たたまれなさに僕は振り切るように走り続けたんだ。



「あ、スズモリ、この後ちょっといいか?」
 作戦会議の後でタカマル様が僕を呼び止める。
「何かご用ですか?」
「ああ、ちょっと……」
 タカマル様に促されて、廊下に出るとハルカさんとナリカさんを乗せたエレベーターの扉が閉まるところだった。しばらく待ってタカマル様に連れられてエレベーターに乗り込んだけど、タカマル様はなにか考え事をされてるみたいに少し上の方に視線を向けて黙ったままだ。無言のままにタカマル様の部屋にたどり着いてしまう。
「入って」
「……お邪魔します」
 僕がタカマル様のお部屋に足を踏み入れるのは初めてだ。シンプルに整った部屋は、まだタカマル様がここにいらっしゃってからそんなに経つわけではないけれど、すっかりタカマル様の空間になっている気がする。
「スズモリ……」
「はい、ご用ってなんでしょう?」
 キョロキョロと部屋を見ていた僕は、タカマル様に呼びかけられて慌てて居住まいを正す。
「スズモリ」
 唐突に、引き寄せられて体勢を崩した僕をタカマル様が抱き留めてくださる。
「あっ、ごめんなさい」
 言って身体を離そうとしたのに、なぜかタカマル様が僕の背中に腕をまわして離れることができない。
「あの?」
 不自由な姿勢のまま、タカマル様を見上げるとなぜか憮然とした表情でタカマル様が僕を見下ろしている。
「えーと、もう離してくださって大丈夫ですよ?」
「イヤだ、離さない」
「離さないって……タカマル様、どうなさったんですか?」
 具合でも悪いのかなと思ってみるけれど、どう考えても今抱き留められてるのは僕の方で、タカマル様が僕に寄りかかっているわけではないし、第一体調が優れないならここはタカマル様ご自身の部屋で、目の前にはベッドもある。
「この前から、スズモリのことで頭がいっぱいになって他のことが手に付かない。俺はどうもスズモリを抱きたいと思ってるらしい」
 タカマル様の言葉を理解するまでに何秒かかっただろう。
「だっ!? 抱きたいって……あの、そういうことはハルカさんやナリカさんと……」
 タカマル様に正面から抱き取られていて、腰の上あたりで両手をしっかり組んでいるタカマル様から、僕は両手を突っ張っても上半身を少し離すことくらいしかできない。
「でも、俺はスズモリとしたいんだけど」
「なんで……だって僕じゃ淫力も引き出せないし……男、だし」
 うつむいてタカマル様の視線から逃げる。
「そりゃそうだけど……んーーー」
 困ったような、ちょっと複雑な表情で目を反らそうとした僕の頬を押さえて、タカマル様が僕と額をコツンとくっつけてくる。
「平和を乱すノロイ党の奴らは許せないし、ハルカさんやナリカががんばってくれてるけど、やっぱり女の子を戦わせて自分は後方で守られてるってのも……やっぱあんま格好良くないだろう?」
 タカマル様の言葉は自嘲で苦くて、僕の胸も痛い。
「俺に出来るのはとりあえずHしかないし、龍輪功もがんばるけど……でもスズモリはそういうんじゃなくて」
 うっすらとタカマル様の頬が赤くなっていて、その真っ直ぐな瞳には情欲がともっている……ような気がする。
「その気になったから、誰でもいいからヤリたいって程俺は飢えてないってのは……わかるよな?」
「それは……」
 コクンと頷く。タカマル様はなるべく閃忍のお2人に淫力を注ぐようアキラ様から言われているはずだし、僕たちもそのためのサポートを命じられている。
「スズモリのことが可愛くてしかたない。龍輪功とか、淫力とか関係なく、スズモリだから抱きたいんだけど……ダメ、か?」
「うっ……そっそんなこと……急に言われても」
 真っ赤になっているだろう自覚がある僕は、そんな顔を見せたくなくて俯こうとするんだけど、タカマル様にしっかり頬を押さえられていて、それもかなわない。
「スズモリ、真っ赤。可愛い」
「かっ、可愛くなんか……」
 タカマル様が僕なんかのことをこんな風に口説くみたいにしてくださるのは、きっと何かの間違いで、こんな状況だから女の人と違うから……だから……
「スーズーモーリー? なに泣きそうな顔してんだ? 俺は皆のことをしっかりサポートしてくれて、ちょっと口べたで色ごとが苦手で純情で、可愛くて、一生懸命なスズモリがいいんだ」
「……タカマル様」
 優しい声で言い含めるように言われて、ついタカマル様の目を正面から覗き込んでしまう。タカマル様は真っ直ぐに僕を見つめていて、視線が合うと嬉しそうに微笑んでくださる。
「スズモリは? 俺のこと、どう思う?」
「あっ、タカマル様は……その、僕が……こんな風になりたいと思う理想の人で、その、かっ……格好いいと、思い、ます」
「そっか、スズモリは俺のこと、格好いいと思ってんだ?」
 ニヤリとタカマル様の表情が変わる。
「お、思ってますよ。タカマル様は道場でもナリカさんに次いでお強いし、みんなを守ろうと一生懸命頑張ってらっしゃるし……」
「そうかァ? 俺ができることなんてHくらいしかないってのが情けねぇけどな」
「なっ、情けなくなんかないです! タカマル様はちゃんとみんなのことを考えてっ」
「スズモリ……ありがとな」
 タカマル様がどれだけ格好いいかを一生懸命喋ってる僕の声は、タカマル様本人の口で封じられてしまう。
「んんっ? んぐっ」
 開いた口の中に柔らかくぬめった塊が押し込まれたかと思ったら、びっくりして縮こまった僕の舌と上顎をくすぐって、入ってきた時同様唐突に出ていった。
「……タカ、マル様?」
「おっと。もしかしてファーストキスだった? だったらうれしいんだけど」
 ビックリしすぎて腰が抜けてしまったので、膝に力の入らない僕をタカマル様が支えてくださる。そのまま少しの距離を移動して、ベッドの端に座らされる。
「あ……えっと」
 何か言わなくちゃと思うのに、何を言っていいのかもわからなくて、目の前に立っているタカマル様を上目遣いに見上げる。
「イヤだった……ってわけじゃなさそうだけど」
 タカマル様の大きな手が僕の頬を包む。
「ちゃんと抵抗しないと、同意だと見なすことにするよ」
 膝でベッドに乗り上げたタカマル様が上から僕を見下ろしている。
「でっでも、その……僕、よくわからなくて……」
 ゆっくりとベッドに押し倒されてしまった僕は泣きそうになってしまう。嫌なわけじゃないと思うけど、でも、じゃあいいのかって言うと、そんなこともなくて、どうしていいのかわからなくなってしまう。
「スズモリ……そんな泣きそうな顔するなよ。苛めたいわけじゃないんだ。ほら、これは平気?」
 タカマル様の手がそっと頬を撫でる。
「あったかい……です」
 大きな手に包まれて、親指が頬の上を滑るとうっとりと目を閉じてしまいそうになる。
「じゃあ、これは?」
 反対の頬に、タカマル様の口唇が一瞬だけ触れる。
「気持ち悪い?」
「……くない、です」
「じゃあ、続けるよ?」
 タカマル様の唇が何度も頬を啄む。柔らかい接触がほんの少しずつ移動していく。
「ここ、も……嫌じゃないだろ?」
 口唇が重なって、でも先刻みたいな強引な侵入はなく、頬と同じように2、3度ついばんで離れる。
「ん……くすぐったい、です」
 ペロリと口唇を舐められて肩が震える。
「じゃあこれは……どうだ?」
 タカマル様の舌が僕の口唇を舐めた後、ゆっくりと中に忍んでくる。歯列をなぞるように往復してから出て行くと僕はようやっとひとつ息をつく。呼吸が整うと、そっと目を開けてタカマル様を見上げる。
「嫌じゃないよな? もっとしていいか?」
 そう言うタカマル様はとても優しく微笑んでいて、僕は気がついたらコクンと頷いていた。
「スズモリも舌……出して」
 言われるままに舌を差し出すと、タカマル様が舌先をペロッと舐める。
「ひゃっ!? やっあの……えっと」
「ん? びっくりした? もう一回な」
 タカマル様の舌が僕のに絡みついてきて、横の方を擦られるとなんだかよくわからないけど、くすぐったいような焦れったいような妙な気持ちになる。
「もうちょっと、口開けて」
 前歯の間をくぐり抜けて、タカマル様に口の中を舐め回されると僕は何も考えられなくなってしまう。
「んっ……あっ、ふ……んんっ」
「スズモリ、気持ちよさそうな顔してる」
「ああっヤッ……ダメ、ですっタカマル様っ!」
 服の上からだけど反応しはじめている中心にタカマル様の手がかかって焦る。
「どうして? 恥ずかしい?」
 なんとかタカマル様に手を離してもらおうと必死に頷くとタカマル様がクスリと笑う。
「気にしなくていいのに。俺も……ホラ、もうこんなだ」
「ひゃっ!!」
 タカマル様が僕の太腿に腰を押しつけてきて、人のそんな状態のモノに触れるのは初めてで、飛び上がってしまう。
「スズモリは俺のコト……嫌い、じゃないよな?」
「まさか!」
 そんなことは絶対あり得ないのに、タカマル様は僕が勢いよく首を横に振るのを見てホッとしたみたいに微笑む。
「じゃ、このまま……続けていい?」
 言って僕の股間に置かれたままだった手をゆっくりと上下しだす。
「あっタカマル様……ヤっ、んんっ」
「スズモリ可愛い……可愛くて愛しくておかしくなりそう」
 ジジジッとジッパーを下ろす音をどこか遠くから聞いているような感じがしている。
「あっダメ! ダメですっ……そんなこと、んっくぅっ」
 下着の中に手が差し込まれると直接触れるタカマル様の手の温度にドクンと心臓が跳ねる。
「でもココは喜んでる。嫌じゃないだろ?」
 タカマル様の手の動きにあわせて水音がたつのが居たたまれない。
「スズモリ……」
「あっウソ? タカマル……様」
 タカマル様は僕のズボンと下着を一気に脱がせて、脚の間に体を置いてしまう。恥ずかしいところが全部見えてしまうような格好に、僕は真っ赤になる。
「タっタカマル様」
「嫌? スズモリが本気で嫌なら我慢するけど、恥ずかしいだけなら悪いけど止めてやんないよ」
「そんな……ううっ、僕……」
 死ぬほど恥ずかしくて、今すぐにでもやめて欲しいけど、恥ずかしくても続けると言われてしまったらどうしていいか判らない。
 クチュッとひとつ水音がして、僕のとタカマル様のを一緒にタカマル様が握り込む。
「気持ちいい? スズモリ」
「あっ……ち、いい……ですっんっあぁ」
 タカマル様の大きな手で擦られると、僕はあっという間に追い上げられてしまって、何も考えられなくなる。
「あっあっや……ああぁぁーーーー」
 先端を引っ掻くようにされて、あっけなく達してしまう。
「はっは……あ、は……タカ、マル……様?」
 荒い息を整えていると、タカマル様が何か屈み込んでいるのが見えて、考えてみれば僕だけ勝手にイってしまったことに罪悪感を覚える。
「ん? もうちょっと意識飛ばしてても良かったのに」
 苦笑、という感じでタカマル様は僕を見ると、いつの間にか手にした透明なボトルをゆっくりと手の上で傾けている。トロリとした液体が零れていく。
「ちょっと冷たいかも……」
「えっ? ひゃっ! タ、タタタ……タカマル様!?」
 いきなり脚の奥、自分でも見たことのないような場所に触れられて、上擦った声になってしまう。
「大丈夫、ちゃんと解すし。スズモリに痛い思いはさせないから」
「い……痛い?」
 触られた場所が場所だけに、痛いと聞いて竦み上がってしまったのはしかたないと思う。
「痛くない。怖い? 大丈夫だから。スズモリ……俺に任せて」
 正面から僕を見下ろしているタカマル様はとても真剣で、僕が小さく頷いたら宥めるように優しいキスをくれる。
 ヌプっ
 先刻の液体のせいか、指が挿ってきても痛みはなくて、ただ違和感というか気持ち悪いというか、なんとも言えない感覚を必死にやり過ごす。
「スズモリ、ほら、口開けて」
 言われるままに口を開けると、深く口づけられる。舌を絡められると下半身の違和感が気にならなくなる。
「ん……あっ、ぅんんっ」
「指、気持ちいい?」
 内壁を擦られて、ビクンと震えたところで、タカマル様が中を探る指を増やす。圧迫感が増したけれど、痛みはないし、ヌメリをまとっているせいで水音が大きくなった気さえする。
「あ……タカ、マル様っんんっ、やっ……あぁっ」
「大丈夫。前立腺は誰でも感じるとこだから、安心して気持ちよくなっていいよ」
 感じる場所を引っ掻くようにされると、何を言われているのかすら理解できなくて、僕はただひたすら甘い声を上げることしかできなくなってしまう。
「だいぶ解れてきた。スズモリわかる? 指にスズモリが絡みついてきてる。スズモリの中、すげー気持ちよさそう……熱くて、うねってる」
「いっ、言わなっ……あっ! や……ぁん」
 放っておかれたままの前も、今は破裂寸前まで張り詰めて、そんなところで感じてしまっているのはすごく恥ずかしいんだけど、イくこと以外もう何も考えられない。
「あ……な、に? 熱、い……あっあっ……きつっぁぁあっ!!」
 タカマル様の猛ったモノが押し当てられたと思ったら、一気に最奥まで突き上げられる。
「スズモリ、スズモリ……大丈夫か?」
 あまりの衝撃ににじんだ涙をタカマル様がペロリと舐めとって、そのまま動かずに僕を見下ろしている目はとても優しい。
「大、丈夫です。その……」
「ようやくひとつになれた。スズモリ……」
 感覚が麻痺したみたいにボーッとなっている僕にタカマル様の優しいキスが降りてくる。僕はタカマル様が好きなんだって、ようやくわかった気がする。あこがれとか、理想とかじゃなくて、好き、だったんだ。
「タカマル様……好き」
 思わず零れた言葉だったと思う。小さなつぶやきは、でもタカマル様の耳にも聞こえたようで、僕の中のタカマル様がビクンと大きく膨れあがった。
「スズモリ……俺も、スズモリが好きだ」
 言ってゆっくりとタカマル様が動き始める。指とは比べものにならない圧倒的な質量で内壁を擦られて息が荒くなっていく。
「やっああっ……そこは、あっ……タカマルっ、様ぁ!」
「くっ……そんなに締めつけるな。スズモリ、力を抜けるか?」
「んっ、ムリ……ですっ」
 力を入れてるつもりもない僕には、どうやって力を抜いていいのかもわからない。熱いモノを体内に感じるだけで精一杯だ。
「スズモリの中、熱くてきつくて、すげーいい。でもあっという間に持っていかれそうだな」
 タカマル様が苦笑して僕の頬を撫でる。
「もっと動いていいか? スズモリ、きつくない?」
「だっ大丈夫……ですっ! んあっ……タカマル様の、いいように……」
「スズモリ、しっかり掴まってろ!」
 ググッと奥まで挿ってきたタカマル様が、噛みつくようなキスをひとつ落として、激しい律動を開始すると、それに合わせて結合部からグチュグチュと水音がたつ。
「あっあっ……タカマル、様っくっ……ぅうっっ!」
 タカマル様との身体の間に挟まれた僕のモノが抽挿にあわせて擦られて、あっという間に登り詰めそうになる。
「もう少しだけ……ガマンできるか?」
 タカマル様が、少しだけスピードを落として、ギュッと抱きしめてくれる。
「がっ、ガマン……します」
 だって、僕もまだ少しタカマル様を感じていたいから。そう口に出しては言えないけど。
 フッとタカマル様の表情が緩んで、口唇がそっと触れるだけのキスが落ちてくる。
「スズモリ、可愛い……一緒にイこうな?」
 なんども可愛いと言われて、僕は可愛くなんかないのにとも思うけど、そう言ってくださるタカマル様の声は妙にくすぐったい気がする。
 タカマル様が腰を引くと抜け落ちそうになるのを引き留めるみたいに、僕のソコに力が入る。意識してそんなことをしてるわけじゃないけど、自然にそんな風になってしまうのを止めることもできない。奥まで一気に突かれると、押し出されるように甘い喘ぎが漏れてしまう。
「あぁっ……んっんっ、あっんん」
 浅いところを行き来するばかりだと、思わず自分から腰を突き出すようにしてしまっているのも無意識で、僕には自分がどれだけ恥ずかしいことをしてるかの意識すらない。
「スズモリ……スズモリっ」
 何度も繰り返しタカマル様が僕の名前を呼んでくださるのを、熱に浮かされたような気持ちで聞いている。
「そろそろ……いいか?」
 もう我慢できない、というように熱い声でタカマル様が言うと、その言葉を証明するみたいに激しく大きなストライドで、打ち下ろすように奥を突かれる。
「んっ、タカマルっ様っ!」
 灼熱の塊に貫かれているような感覚に、意識も真っ白に塗りつぶされていく。
「あっもっ……もう、僕っ……んあぁっ」
「いいよ、俺も、もう……くっ」
 ビュクッ、ビュッビュッ……ビュルルッ
 タカマル様に最奥を突かれたと同時にお腹の上に生暖かい感触が広がる。身体の奥でタカマル様もはじけて、ドクドクと脈打つと、イッたばかりの敏感な身体はその動きにさえ刺激されて、いつまでも射精が終わらない。
「大丈夫か? スズモリ」
 ゆっくりと僕の中から抜け出たタカマル様が少し心配そうに僕を見下ろしている。汗で濡れて張りついた前髪をそっと払ってくださる手つきが優しい。
「大丈夫……です」
「どこも痛いとことかないよな? 俺、あんま加減できなかった気がする」
「痛……くは、ないです。ちょっとヘンな感じは……あっ!?」
 どこも痛めたりしてないか確かめようと身じろぎした途端に、あろうことかトロリと中から何かが溢れてきた。何かって言ったら、それはタカマル様が僕の中に放ったモノしかないわけで……慌ててソコを閉じようとするけど、うまく力が入らなくて泣きそうになってしまう。
「どうした? ああ、少し零れてるのか……スズモリ、真っ赤になってる。恥ずかしいんだ?」
「やっ見ないでください! あのっティッシュ、ティッシュ借りていいですか?」
「見るなっつってもなァ……すげーヤらしい眺め。てか、俺が出したものは俺が後始末するのが道理だろ?」
 タカマル様がソコを見て目を細めて……というか、そんなところを凝視しないでくださいーーっ、といくら心の中で叫んでも通じないわけで。
「あ、ああっ後始末って」
「ん? 中出ししちまったからな。きれいにしとかないと腹下すぞ?」
「そう、なんですか? でも自分で洗えますから、その……」
 こうしてる間にもトロトロと零れてくる液体が肌を伝うのがくすぐったくてしょうがない。
「へぇ、スズモリは自分で指突っ込んで俺の精液を掻き出せるんだ?」
「へっ?」
「そりゃ、ぜひ見学させてもらいたいなぁ。オナニーしてるみたいでエロ可愛いんだろうな」
「で! ででででで、できません!!」
 ヤらしいことを言い募るタカマル様が少し意地悪な表情をしてるのは絶対気のせいなんかじゃないと思う。
「ん? 自分じゃ洗えないってこと?」
「うう……」
 自分であんなところに指を入れるなんて、考えただけで気が遠くなりそうで、涙目になりながらコクンと頷く。
「じゃあ、可愛くおねだりしてくれたら、俺がきれいにしてやるよ」
「おねだり……ですか?」
「そう、おねだり」
 タカマル様はニヤニヤしながら僕の耳に囁くような声で、どう言えばいいのかを教えてくれるけど……い、言わなきゃいけないんだろうか? チラリとタカマル様の表情を見上げるけど、楽しそうに笑ってるばかりで。
「あ……僕の、中……の、タカマル様の、せっ……精、液を、その……きれいに、してください」
「よくできました。ま、ホントはもうちょいヤらしいセリフを言ってもらいたかったんだけど、スズモリは恥ずかしがり屋だし、可愛いから許してやるか」
 そう言ってタカマル様がご自分のシャツを僕に着せかけてくださる。なんで僕のシャツじゃなくてタカマル様のなんだろうと思ったけど、タカマル様が僕のことをいきなりヒョイっと抱き上げるから、僕は慌ててタカマル様の首にしがみつく。だって、そうしないと落ちてしまいそうだし。僕をいわゆるお姫様抱っこで抱いてるにも関わらず、タカマル様はよろめきもしないで、部屋の扉を開けてしまう。
「あ? あの……こんなところを誰かに見つかったら……」
「大丈夫だろ? もっとも俺は誰にバレても構わないけどな」
「そんな……だって」
 ハルカさんやナリカさんに知られたら、どう思われるだろう? 気を悪くされるに違いない、と思う。淫力もない僕なんかがタカマル様に精を注いで頂いたなんて、言えるわけがない。
「ま、スズモリが知られたくないなら、お茶でも零したって言っておくさ」
「……」
「ほら、着いた」
 脱衣所に着いて、タカマル様がそっと僕を立たせてくださるけど、なんだか少し哀しくなってしまった僕は、タカマル様から手を離せない。
「スズモリ」
 チュッと優しいキスが額に落ちてくる。
「スズモリ、若頭領として、今はノロイ党との戦いもある。龍輪功を止めるわけにはいかないけど……でも、戦部鷹丸としての俺はスズモリが好きで、一生可愛がってやりたいと思ってる」
「タカマル様……」
「だから、もう少しだけ……待ってくれるか? 俺がスズモリだけの俺になるために、頑張って平和を取り戻さなきゃな」
「タカマル様!」
 ギュッと、僕から腕に力を入れてタカマル様にしがみつく。
「うれしい、です。そんなふうにおっしゃって頂いて。僕も、タカマル様が、好き、です」
 はっきりと、言葉を区切って伝えてみる。しっかりと視線も合わせて。そうすると、タカマル様が嬉しそうに目を細めて微笑んでくれた。
「愛してる、スズモリ」
「僕も……タカマル様」
「さて、愛の告白も無事済んだことだし、次はこっちの番だな」
 タカマル様の手が、僕のお尻にかかって双球を割り開くように広げる。
「やっ、ななな、なにするんですか!?」
「なにって……洗ってやる約束だっただろ? ホラ、おとなしくしてろ」
 ガラッと扉を開けて、脱衣所から風呂場へと連行される。
 その後、僕がどんなに恥ずかしい目にあったのかは、あまり語りたくない。ただ、あまりの恥ずかしさに少しだけ泣いてしまった僕を少しオロオロした様子で宥めてくださるタカマル様が、とても優しかったことは確かだ。
「2人の時は、敬語はなるべく控えめに」
 そんな約束までさせられてしまったけれど、でもやっぱり憧れの方だし、こればっかりは直すのは難しいと僕は思っている。



fin
スズモリの若頭領観察日記。最初はスズモリの目を通した、タカマルvハルカさんを書くつもりだったんだけど、はっと気がついたらいつの間にかタカマルvスズモリに。不思議〜(笑)