許婚 ── いいなずけ ── |
「久那妓、俺が出る」 俺たちは町に入ったところで敵に囲まれていた。 先陣を切った仲間たちはすでに戦線離脱して撤収している。今前線に残っているのは俺と久那妓の二人だけ。最初は山のようにいた敵方も戦意喪失して離脱したものがほとんど。今俺たちと対峙しているのは大将を除くともう数えるほどしかいない。 「しかし……お前にはあいつとのタイマンが残っているだろう。余計な体力を使うことはない、私にまかせろ」 確かに久那妓は強い。特にあのスピードは俺でも正直かなわない。その素早さを活かしてのヒットアンドアウェイで攻撃を凌いではいたが、それでも少しずつ確実に久那妓の体力は奪われつつある。 「下がってろ、久那妓。一気にカタぁつけてやる」 「待て、狼牙!」 久那妓の声が聞こえたが、かまわず前に出る。遠くから射かけてくる弓矢が掠めるがそんなのァ痛くもねェ。一気に間合いを詰めて懐に入る。 「狼牙さーん」 支援部隊がようやく来た頃には敵を全滅させて、番長を縛り上げているところだった。あとはまかせて久那妓と本隊に戻って次の戦いまでに少しでも回復につとめることにする。 「まったく、お前は無茶をしすぎる!」 「そうは言うがな」 俺に言わせれば久那妓だって充分無茶をしすぎだ。 「気持ちは判らなくはないが……こんな戦い方ばかりしていては回復が追いつかないだろう」 確かに気力を一気に放出した後は戦線復帰に時間がかかってしまうんだが、久那妓が傷ついていくのを見てられなかったんだ、仕方ねぇじゃねーか。って、そんなこと口に出して言えるわけじゃないんだが。 「じゃ、疲れてるとこ悪いんだが……」 「……」 久那妓が呆れ果てたとでも云った表情で、ずいぶん下からなのに何故か見下ろすように大仰にため息をつく。 「ちっとも悪いと思ってるとは思えないがな」 「そうか?」 実際悪いなんてこれっぽっちも思ってる訳じゃないんだが。久那妓のあごを掬い上げるようにして噛みつくように口づける。乱暴に口内を舐め回すと久那妓の身体から徐々に力が抜けていく。 「久那妓……」 「な、んだ?」 近すぎる距離に焦点が合わないのか何度か瞬く。 「お前の部屋でいいか?」 選択肢は色々とあるが、一番久那妓自身がリラックスできる場所だろう。 「あ、あ……構わない」 校内に入っても肩を抱き寄せたまま歩いていると、すれ違う奴らは気を遣ってか会釈していくだけで話しかけられることもなくあっと言う間に久那妓の部屋の前まで来てしまう。 「久那妓」 部屋に入ると同時に久那妓をきつく抱き寄せる。本来の姿に戻れない子供のような躰は折れそうなほどに細い。そのまま抱き上げて部屋の奥のベッドまで運ぶと投げ出すようにして組み敷いてしまう。 「……」 乱暴な扱いに久那妓は一瞬眉をしかめて、それから小さく諦めの吐息を吐き出す。おとなしくしている久那妓にのしかかるようにして着物の袷に手を入れる。性急に内腿に手を滑らせると久那妓の身体がピクンと反応する。 「ろ、うが」 「傷が出来てる」 腕や脚にひとつひとつは小さな傷が、でもそれなりに多く跡を残している。 「ああ、たいしたことはない」 もう痛みさえ感じないだろう小さな傷跡に口づける。許せねぇ。沸々と怒りが腹の底から湧き上がってくる。一緒に闘いながらこいつに傷を負わせてしまった自分自身が許せねぇ。 「狼牙……」 小さな手で顔を引き寄せられる。 「大丈夫だと言っただろう? お前の考えていることくらい判るぞ」 「……久那妓」 間近で視線が交わる。 「わかった」 その代わり、というようにまた口づけをかわす。粘膜と粘膜を擦り合わせるように、激しく久那妓の官能を引き出すように口内を愛撫しながら着物を脱がせていく。長いキスが終わる頃には小さな下着で大事な部分がようやく隠されているだけの格好になっている。 「は……ぁ」 薄い下着一枚を隔てて一番感じる場所を揉みほぐすようにすると切なげに足の指先にまで力が入る。今はほとんど膨らみもない胸に舌を這わせると堪えきれないように太腿で手を締め付けてくる。 「今日は特に感じやすいみたいだな?」 「そ、そんなこと……は」 ない、と言いかけて漏れかけた喘ぎを噛み殺す仕草がとてつもなくそそる。ロリコンの気はないはずなんだが、今の久那妓にも充分に欲情を覚えるのはやはりそれが久那妓だからだろう。 薄い布地の間に指を忍び込ませると濡れた感触が伝わってくる。狼の嗅覚を備えた久那妓だから俺の欲情した匂いにも身体が反応しているんだろうか。しっとりとした肌と濡れた粘膜の手触りの違いを楽しみながら手を彷徨わせていると、それだけじゃ足りないのか久那妓が俺の名を呼ぶ。 「ろ、狼牙……」 「もう欲しいのか?」 「……」 素直に欲しいと言えばいいのに、それを自分から口にするのは屈辱だとでも思っているのか久那妓は黙ってしまう。そんなところも可愛いと思ってるなんて知らないんだろうが。 「なんだ、欲しいんじゃないのか」 わざとそんなことを言って指をいきなり突き立ててやる。 「あうっ」 膣中は熱く指1本しか入れてないのにきつく締め付けてくる。こんなに狭いのに俺を迎え入れることが出来るんだから不思議としか言いようがない。今日はそんなに意地悪な気分でもないので、軽くほぐすとすぐに指を増やしてやる。久那妓の場合わりと浅めのところに敏感なスポットがある。そこを何度もノックするようにしながら軽く抽挿すると、グッと身体に力が入る。 「ホラ、ホラ」 「あっ、っっん、んく」 キューッと収縮したかと思うとビクビクっと痙攣が走る。治まるのを待って指を抜くと口唇をあわせる。 「久那妓」 ようやく呼吸が落ち着いてきた久那妓の手を取って自己主張している陽根に触れさせると、最初はその大きさにびっくりしたようにおずおずとその小さな手で握ってくる。 「こ、れでいいのか? それとも舐めた方がいいのか?」 自分のやり方でいいのか久那妓が小さく呟くが聞こえないふりをして久那妓のやりたいようにやらせてみることにする。手でも口でも、そりゃ久那妓がやってくれるならイイに決まってる。 手の平を握ったり開いたりしているうちに先端が濡れてきたのに気づいたのか、今度はそこに指を這わせる。 「……男も濡れるんだな……」 「ああ、気持ちよくなると濡れてくるな」 「気持ちいいのか?」 「いいぜ」 ビクンと手の平の中で跳ねたのに驚いて久那妓の視線が下がる。そのまま引き寄せられるように唇で触れると先端の丸い部分を呑み込む。舌が溝を抉るように刺激して同時に根本を両手で擦られると思わず腰が動いてしまう。 「ク、ゥ」 イキそうになるのをなんとか我慢して久那妓の身体を引き寄せる。頭を跨がせるように上に乗せると恥ずかしい格好に一瞬抗議の声が上がるが構わずそこに舌を這わせる。互いに股間に顔を埋める形で刺激し合うと、次第に久那妓の口から漏れるのは喘ぎ声ばかりになってくる。 「ろ、狼牙……やめっ……そんなにし、あ、あぁっっ」 自分がやっているのだから俺は素直に身を任せておけと言いたいらしいけど目の前に美味しそうに広がるごちそうに手を出さないって法はない。が、さすがにこっちも我慢の限界が近い。久那妓の口からはこぼれているが、その小さな手の平に擦りつけるように腰を使う。 「久那妓……」 「んっ」 体勢を入れ替えて久那妓を組み敷くと正常位でつながった。長い相互愛撫の後ようやくの結合に久那妓もホッと息を漏らす。あれだけ狭く思えた久那妓の中は熱くやんわりと包み込んで蠢いて、俺はまるで覚えたてのガキみたいにがむしゃらに腰を振るしか出来なかった。 「クッ……」 「ん、っっく」 最奥に精を放つとそれに引きずられるように久那妓も達していた。そのまま抱きしめていると、呼吸の落ち着いた久那妓がもぞもぞと居心地悪そうにしている。 「狼牙……その、今更かも知れんが」 「ん?」 「こんな……体力を使うようなことをしているのに、なんでお前は回復しているのだ?」 眉間に皺を寄せて、本人はいたって真面目に考えているらしい。 「そりゃ、好きな女を抱けば疲れなんてふっとぶだろうよ」 「そんなものか?」 笑って応えれば、久那妓もなんとなくまだ不思議そうにしてはいるものの頷いてる。 「そんなもんだ」 だからお前はずっと俺の側にいろ、とずっと前に言った言葉を繰り返す。俺の側にいれば今日みたいに傷つくこともあるだろうが、それでも。それでもずっと…… 「今日はこのまま眠りたい」 久那妓がそんなことを小さく呟く。 「ああ、ずっと抱いていてやる」 fin |
なんだかわかりにくいですかね。エロはともかく(笑) 「許婚」、という設定に弱い私ですが、久那妓は可愛くて悶えました! なにが可愛いってあの性格ですよ。基本ラヴラヴが好きなので、狼牙みたいに「俺の女」がいっぱいいるっていう設定は「……」なのですが、でも狼牙は格好いいよね。ダメで(笑) なんていうかどの女にも「ホレてる」感じがする。でも久那妓は特別なの。なんでかわかんないけど、他のどの女の子が自分の元を去っても、自ら去っていったのである限り狼牙は頓着しないと思うんだよね。でも久那妓はダメなのよ。そんな感じで。 |