Sister Complex
「乃絵美が倒れた!?」
 妹が倒れたと聞いて、俺は保健室へと急いだ。妹の乃絵美はもともと身体が丈夫なほうではない。しかし、高校生になった最近では学校で倒れることもほとんどなかったのに……
「大丈夫か、乃絵美?」
「あ、お兄ちゃん」
 保健室の扉を開けると、乃絵美はちょうどベッドから起きあがったところで、俺の顔を見ると、小さく微笑んだ。
「ちょっと、貧血みたい……今、帰ろうと思ってたところ」
「もう少し休んでたほうがいいぞ、顔色悪いし」
 大丈夫だよ、と言って立とうとして乃絵美がフラつく。
「ほら見ろ、ムリするなって。頼りない兄貴かもしれないけど、こんな時くらい俺を頼れって」
「うん、ごめんね、お兄ちゃん」
 もう一度ベッドに入ると、乃絵美が言う。
「じゃあ、少しだけ、寝るね」
 ベッドサイドに丸椅子を引っ張ってきて、眼を閉じた妹を見る。
 色が白い。今は蒼白と言っていいかもしれない。ふだんは、ルージュなどぬらなくても紅い唇が、今は紫がかっている。長いまつげが時折揺れる。
 もともと丈夫じゃないのに、もっと俺を頼ってくれればいいんだが……。
 俺は、乃絵美のためにももっとしっかりした兄にならなくちゃいけないんだよな……。
 小一時間ほども、そんなことを考えていただろうか。乃絵美がゆっくりと目を開けた。
「今、何時? 私どのくらい寝てた?」
「ん、と5時半か、1時間くらいは寝たかな?」
 乃絵美の額に手をやる。冷たい肌。
「起きられるか?」
 ん、と応えて乃絵美がゆっくりと起きあがる。
「ほら」
 背中を向けると、乃絵美が体を預けてくる。
「ごめんね、お兄ちゃん。重くない?」
「ぜんぜん。もっと太った方がいいんじゃないか」
 俺の言葉にクスクスと笑った乃絵美は、ほんとうに軽かった。
「よいしょっと」
 掛け声をかけて立ち上がると、俺は乃絵美を背負って帰路についた。
 他愛のない話をしながら歩いていると、時折乃絵美の長い髪の毛が俺の頬をくすぐる。ふとした弾みに胸のふくらみを背中に感じて、妹だと判っていながらもドキドキする。
「乃絵美が倒れるのも久しぶりだな。なにかあったのか?」
「ううん、そんなことないよ。ちょっと体調が悪かっただけ」
 小さくそう答える乃絵美。吐息が肩口にかかってくすぐったい。
 もっと強くなって、俺が乃絵美を守ってやらなければならない。そんな思いが心の中を渦巻く。


 乃絵美が柴崎のやろうに振られた。しかも貧血をおこして倒れた乃絵美をあの野郎はあろうことかその場に捨てていってしまったのだ。許せなかった。あんな野郎に乃絵美は……!!
「……でも私はこんな性格だから」
「面白みもないし……」
 ポツリポツリと乃絵美が柴崎とのことを話してくれる。客の来ない夕方。久しぶりに乃絵美の奏でるやさしいピアノの音をききながら。
「お兄ちゃんが私の恋人だったら……」
 …………
「あ、ごめんね。お兄ちゃんには菜織ちゃんていう……」
 乃絵美の言葉は俺の唇の中に消えた。
「柴崎にはお前はもったいなさすぎるよ」
「お兄ちゃん……」
 乃絵美の目が驚きに見開いている。
「俺じゃ、嫌か?」
 乃絵美はうつむいたまま、首を横に振った。
「……いや、じゃない」
 乃絵美の返事を待たずに俺はもう一度くちづけた。唇が触れるだけの、しかし長いキス。
「店、閉めちゃおうか」
 俺はさっさと閉店の準備をすると、まだピアノの前でボーッとしている乃絵美を抱きかかえるようにして2階の自分の部屋に連れていった。
 ドアの前でもう一度キス。
「ほんとうに、いいの?」
 俺の胸で小さく頷く。
 ついばむようなキスを繰り返しながら、俺は乃絵美のエプロンドレスを脱がせていく。乃絵美は白い下着をつけていたが、まけないくらいに肌も白く透き通っている。
「お兄ちゃん、恥ずかしいよ……」
 下着だけになった乃絵美は、その細い腕でなんとか身体を俺の目から隠そうとしてもじもじしている。
「乃絵美……」
 俺は乃絵美を抱き寄せ、そっと背中をさする。ゆっくりとベッドに座らせてから、その白い喉に舌を滑らせる。ブラジャーを外すとまぶしいくらいに白い胸がこぼれた。乃絵美は恥ずかしさからか、目を閉じてうつむいている。
 まず、掌に収め、ゆっくりと揉んでみる。次に指の腹で下から上に撫で上げる。
「ん……」
 乳首に触れると、かすかに乃絵美が声をもらす。ベッドに完全に横たえると、俺は喉から鎖骨へ、胸へと舌を移していった。
「あっ……」
 それまで噛みしめていた唇が、思わず半開きになる。同時に俺は太もものあわせ目にそっと手を置く。乃絵美はビクッとして脚を固く閉じる。
「乃絵美……」
 舌で乳首を転がしながら、内腿をゆっくりとなぞる。乃絵美の白い肌が俺の触れたところから徐々にピンクに染まっていく。
 乃絵美は声を押し殺すためか、右手の親指の爪を咬んでいる。愛しい。乃絵美のこんな表情は他の誰にも見せたくない。俺はそう思うと一層愛撫に力を込める。
「お兄……ちゃっ!」
 俺の吐息が白いパンティにかかると、乃絵美は小さく叫んだ。下着と素肌の感触を楽しみながら俺はそっと乃絵美の表情を盗み見る。少しだけ眉間にしわをよせて、唇を噛みしめている。
 パンティのふちにそって舌を這わせる。甘い体臭が広がる。
 足をそっと開かせてその間に潜り込む。
「や……ん、恥ずかしい、よ」
 鼻にかかった声が耳に心地よい。
「大丈夫」
 俺はゆっくりとパンティの中心に口を近づける。そこはうっすらと湿っている。それは妹の、初めて見る“女”の顔だ。
 舌を突き出すようにしてそこを舐める。布地のざらついた感触と酸味のある匂い。
「う……く」
 乃絵美が堪えかねて躰を捩るようにすると、それまで仰向けに寝ていたために潰れていた乳房が柔らかさをとりもどす。
「んっ」
 薄い布地を透してみえる凸凹がかえって艶めかしい。いつまでも眺めていたい気もしないではないが、俺自身興奮しきっていて、あまり自制がきかない。
 乃絵美の体に残る最後の1枚を取り除くと、俺はまた、彼女の全身にキスを繰り返した。乃絵美が身を捩るたびに長い髪の毛が肌の上をくねる。
「乃絵美のここ、洪水みたいだ」
「や、ん。お兄ちゃんのイジワ、ルっ」
 溢れる愛液を掬い取って乃絵美に見せるように舐めてみせる。
「美味しいよ」
 言って、今度は直接乃絵美の中心に口づける。下着越しとはちがう、柔らかい感触。襞を一枚一枚分け潜るようにして舌を這わせていく。花びらのつぼみをきつく吸うようにすると乃絵美が大きく跳ねる。
「んっっ」
 左手を伸ばして乳首を擦るとさらに声をあげる。俺は肉芽を舌で吸い上げながら、密壺に指を差し込んでみた。指一本なのに、襞がからみついてくるようだ。
「っっく」
 このまま挿入したい気もするけど……
 ゆっくりと指を抜き差ししながら、その上に顔を覗かせている真珠を摘み上げるようにして乃絵美を絶頂に誘う。
「っおにい……ちゃっっ」
 軽い痙攣を続ける乃絵美の中から指を抜いて、そっと彼女を抱き寄せる。
 目元にうっすらと涙が浮かんでいる。
「辛かった?」
「ううん、そうじゃないの」
 乃絵美は小さく首を横に振る。
「そうじゃなくて、わたし……うれしかったの、お兄ちゃんが私を抱いてくれて」
 でも、お兄ちゃんは? そんな目で俺を見る。
「乃絵美が俺なんかでもいいんなら、俺はいつでも(笑)」
 すっかりテントを張っている前を示してみせる。
「でも、今日はここまで、な。俺、乃絵美の見て興奮しすぎてるから、今入れたら自制が効かない。乃絵美のこと壊しちゃいそうだから」
 今度はじっくり……と小声でつぶやくと乃絵美が俺の胸でクスクスと笑う。
「兄妹でこんなことしてるってお父さんたちが知ったら怒っちゃうね」
「そうだな」
 でも、まあ。
 俺は思う。それでも乃絵美のこんな笑顔が見られるんだから。
 昨日までよりももっと、乃絵美を守るためにも強い男にならなければ、俺は心に誓った。

Fin