Sister Complex3 6月の花嫁 |
「困ったなァ」 まだ残暑厳しい九月初旬。ロムレットの天井を見上げて菜織がつぶやいた。 「なにボーッとしてんだよ」 テーブルにアイスティーを置いて、正樹はそのまま菜織の正面に腰を下ろす。 「ったく、久々の休みだっていうのに、帰ってくるとすーぐ手伝わされるしよ」 正樹のグチにも菜織は心ここにあらず、だ。 「まいったなァ……どうしよう……」 クルクルとストローをかき回しながら菜織の目が泳ぐ。 「なんだ、何かあったのか?」 彼女の瞳をのぞき込んで声を潜める。 「うーん、あのさァ」 言いにくそうに、ゆっくりと言葉を選ぶ。 「……見合い」 「み!?」 正樹の目が大きく見開く。 「なんか両親が妙に乗り気で、断りにくい雰囲気なのよねェ」 でもなァ、とため息をつく。 「なんだ、見合いくらいしてやりゃいいじゃん、結婚しろってっんじゃないんだろ?」 「そんなこと言ったって、合っちゃったらますます断れなくなっちゃうでしょー!?」 「きゃっ」 「ビックリしたぁ、菜織ちゃんたら急に大きな声だすんだもの」 乃絵美がケーキの乗った小皿をテーブルに置く。 「これ、差し入れね」 「乃絵美さぁ、……結婚、してみない?」 唐突な菜織の言葉に、乃絵美が固まる。 「えっと、あのぉ……」 小首をかしげて、困ったように笑う乃絵美を見て菜織は吹き出してしまった。 「ハハハッ、……ちょっと、相談あるんだけど、上、いい?」 「花嫁控え室」 扉にかけられたプレートを見て、大きく深呼吸する。 コンコン。 思いきって扉を開ける。 まず瞳に飛び込んできたのは、純白のドレス。白が、緑の映える窓に浮き出している。 「おっそーい、乃絵美」 振り返った菜織が笑いかける。既に化粧も着付けも終えていて、控え室で一人で時間を待っていたようだ。 「菜織ちゃん、きれーい」 「乃絵美も着てみる?」 え? いつものように小首をかしげて問うような眼ざしをする乃絵美に、菜織は笑いかける。 「まだ時間もあるし、ね?」 それに、と菜織は声をひそめて言葉をつなぐ。 「それに、今日の本当の主役はあんたなんだしね、乃絵」 手際よく乃絵美の服を脱がせると、自分もさっさとウェディング・ドレスを脱ぎ捨てる。 乃絵美の着ていた、ラベンダー色のワンピースにそでを通して、菜織は振り返る。 「ウッ、乃絵、もしかして、また痩せた?」 背中のチャックを息を止めて、引き上げる。 コンコン。 「菜織ィ、準備で……」 部屋に入った途端正樹は言葉を失った。 「あ、丁度よかった、今呼びに行こうと思ってたのよ」 菜織が正樹を手招きする。乃絵、きれいでしょ? と耳打ちすると、正樹は少し赤くなった頬を意識した。 「今日は、私と正樹の結婚式だけど、私たちが共犯者になる日、でもあるわ」 菜織が乃絵美の瞳を覗き込んで、言う。 乃絵美は、兄の顔を見て、ゆっくりとうなづく。 「じゃあ、俺たちは、今から、一生両親を欺き通そう」 三人がうなづき合う。 「あ、そうだ」 菜織が急に何かを探すように首を廻らせる。時計を確認すると、正樹を振り向く。 「まだ時間は大丈夫だから、私ちょっとトイレ行ってくるね」 「乃絵美、二人だけの結婚式、やらせたげる。正樹、鍵かけといてね、一時間だけだからね」 じゃね、と菜織は乃絵美の服を着たまま控え室を後にしてしまう。 「参ったな」 正樹は一応言われたとおりドアに鍵をかけると、妹の方を振り返った。 静かな空気が、そこにある。 「……きれいだ、乃絵美」 乃絵美は赤面して俯いてしまう。 正樹はそんな乃絵美をたまらなく愛おしいと思ってしまう。どうしても、手放したくないと思ってしまう。だからこそ、強引な手段で手折ってしまった。 「乃絵美……」 やわらかな頬に手をやる。 「お兄ちゃん……」 大きな瞳が見上げてくる。 キス。 乃絵美は、決意と不安と期待と、その全てを兄に伝えようと、正樹の胸につかまった手に必死に力を込める。 「本当に、いいんだね?」 驚くほど優しい声が出た。 うなづいた乃絵美を抱きしめる。 首筋から肩、そして大きく開いた胸元まで、ゆっくりと口唇をすべらせていく。 背中を抱いていた手をすべらせて、うまく妹の身体を反転させると、背後から首筋に舌を這わせる。 「あ……んっ」 左手の指を半開きの口に差し込む。抑え切れない乃絵美の声が洩れはじめる。右手で胸元をまさぐると、元々サイズのあっていないドレスが簡単にはだけ、白い乳房がこぼれた。 「あ」 羞恥のためかうっすらと朱に染まった乃絵美の首筋を繰り返し正樹の口唇が往復する。 ひだが多く、レースの折り重なったスカートをたくしあげて正樹の右手が内股をなぞりあげる。ガーターで吊るタイプのストッキングをはいているので、途中で肌ざわりが変わる。きめの細かい肌を、触れるか触れないかの微妙なタッチで何度も往復する。 乃絵美自身の唾液で濡れた左手指でとがった乳首をやさしくもみほぐす。同時にシルクの下着に指をすべらせると、そこはもうしっとりと湿っている。 「乃絵美、濡れてる」 「や……ん」 爪でひっかくように下着越しに敏感な突起を刺激する。 「うっ……く」 テーブルに手をついて必至に立っている妹の身体を反転させて正面から抱きしめる。 正樹は少しかがむようにして、乃絵美のどちらかと言えば小ぶりな乳房を、下から掬い上げるようにして口に含んだ。 ともすれば崩れそうになる彼女の躯をテーブルに寄りかからせて支えると、乳房への愛撫を再開する。 乳暈にねっとりと舌を絡ませる。 「は、ァー」 大きな息をして乃絵美は兄の攻めに神経を集中する。 舌と指で左右の胸を同時に弄われると、むず痒いような感覚が全身に広がる。 「乃絵美……」 妹の足下に膝立ちになった正樹は、ドレスの裾をそっと持ち上げる。 「……お兄ちゃん」 ゆっくりと下着が引き下ろされる。ひんやりとした空気が触れる。やわらかな陰りが吐息にそよぐ。 やさしく、口づけた。ついばむようなキスを繰り返す。ドレスの中の限られた空間に乃絵美の香りが濃くなっていく。指先を潜り込ませると、下腹部に力が入るのがわかる。舌をのばして密液を掬う。指の動きにあわせてグチョグチョとイヤらしい音が響く。ハァ、ハァという自分の呼吸音が聞こえる。視覚と聴覚を同時に刺激されて正樹は耐えがたい欲望に支配されていく。 「乃絵美、乃絵美……」 正樹は妹のスカートの中から顔を出して、ゆっくりと深呼吸をした。外の空気は涼しく、血の昇った頭を少し冷やしてくれる。 立ち上がると、乃絵美の顔を正面から見つめる。 「乃絵美、本当に、いい?」 乃絵美がうなづく。 「父さんと母さんを騙し続けなくちゃいけない。それでも、いい?」 「それでも……お兄ちゃんがいいの。お兄ちゃんじゃなきゃダメ、な、の」 後ろの方は、消えいりそうな声になる。 「乃絵美……」 乃絵美の顔を見つめたままで、正樹は屹立したモノに手をかける。いくよ、小さくささやいて、彼女の中に体を埋める。 細い首筋から鎖骨へと、口唇を滑らせながら、ゆっくりと腰を進める。乃絵美は声を必至に抑えているが、それがかえって悩ましい吐息となって正樹の耳朶をくすぐる。彼女の反応に気を良くして、正樹はゆっくりとした抽挿で確実に乃絵美の官能を高めていく。 「んっ……んぅ」 鼻にかかった媚声が洩れる。正樹の動きにあわせて長い髪の毛が揺れる。白い肌に指を這わせると、しっとりと手に張りついてくるようだ。乳房をそっと揉みほぐす。柔らかいのに、弾力があって手を押し返してくる。さくら色にも似た先端の突起を指で弾くと、乃絵美の声が途切れ、同じリズムで正樹を締めつけてくる。 「あっ……ん」 眉根を寄せて喘ぐ乃絵美の表情をみながら、ゆっくりと、抜けそうになるまで腰を引く。そのまま一拍おいて、ズンッと一気に沈める。結合部分に正樹は左手の親指をねじ込む。少し腰を引いて、敏感な突起を探り当てる。下から上に擦りあげて包皮を剥くと、指を添えたまま絶頂に向けてスパートをかける。乃絵美が啜り泣くように、途切れがちに、快感を訴えている。 「お、にぃ、ちゃっ」 乃絵美の声を合図に、正樹は白濁した樹液を妹の中に吐き出した。彼女の膣中が時折ビクッと痙攣するのにあわせて、正樹の肉柱も脈打つ。 「…………」 正樹は、妹の顔を見た。 さっきまでの、どこか苦しそうな表情は消えている。乃絵美は瞳を静かに閉じて、放心したように柔らかい微笑みを浮かべている。 「乃絵美、愛してるよ」 口づけ。 ゆっくりと、乃絵美の中から肉欲の塔を引き抜くと、正樹は限りなく優しい気分で今の行為を反芻した。 「お兄ちゃん」 「……いいよね? 乃絵美、お兄ちゃんを好きでも、いいよね?」 静かに瞳を開けて、言葉を紡ぐ。 ドレスをなおすのを手伝ってやりながら、正樹は彼女の言葉をかみしめる。 「ああ、乃絵美は、俺のモノだ」 静かな、しかし重厚な音楽が鳴っている。高い、アーチ状の天井の下を父親に手を引かれて、花嫁が歩いている。 花嫁を花婿にバトンタッチして、父は後方に控える。 低い声で神父が契りの言葉を紡ぐ。 「はい」 正樹が、応える。裏切りの言葉を。 「はい」 菜織が応える。心の中で舌を出しながら。 ラベンダーの服の中で、乃絵美の中にそそがれた樹液が滴る。 「はい」 乃絵美が応える。心の中だけで。 そして、3人の新しい生活が、はじまる。 Fin |