朱鷺♂v友弥 |
「うん! いいね。とても、いいね!」 突然現れた、凜の許婚者を自称する凰火朱鷺は、友弥との手合わせの後、そう言って笑った。 「……!」 「ふふ、そう睨まない。条件によっては凜さんのことを諦めてもいい」 ニコニコと微笑みながらそう言う朱鷺に友弥も凜も少なからず背筋を寒くする。普通に微笑んでいるだけなのになぜか黒いモノが見える気がしてしまう。 「いったい……なにを……」 企んでいるというのか。 「うん、ここではなんだし……場所を移さないか?」 道場でするような話でもないだろう? という朱鷺に、友弥と凜も警戒しつつもリビングへと移動することに同意する。 「……というわけでだね、この婚約話は双方の両親の合意の上ですでに決定済みなのだよ」 困ったことにね、と嘆息してみせる。 「でも!」 それでもだからといって納得できることではない。顔を見たこともない人間をいきなり婚約者として認識しろと言う方が無理だ。それに、凜の気持ちを考えたら、友弥には引き下がるわけにはいかない理由がある。 「うん、だからね」 出されたお茶をズズと啜って、朱鷺はニッコリと笑った。 「私も自分の目で確かめようと思って凜さんに会いに来た訳なんだよ」 「……お兄ちゃん」 凜が不安そうに友弥を見あげる。それを安心させるように頭をポンと撫でてやって友弥は朱鷺に再度向き直る。 「ふたりと手合わせして、そうだね。私は凜さんとの結婚を取り止めてもいいと思っている」 「ホントですか!?」 途端に嬉しそうな顔をするふたりに、朱鷺は苦笑を漏らす。 「うん、ホントなんだけど……でも条件があるって先刻言ったよね?」 覚えている? と問われて、忘れていたとは言えない友弥。 「ほら、私にしてもね。本家の決定事項を覆すのはそれなりに骨が折れるわけだよ」 「……」 確かに、そうだろう、とは思う。 「というわけで、しばらくここに泊めてもらうことにするから」 「……なにが、というわけ、ですか!」 凜の冷たい声が響く。 「うん。凜さんの代わりになる婚約者を連れて行かないと、あの人達を納得させられるとは思えないからね」 「でも、だからって……なんで、家?」 「それは、条件、としてだよ」 ニッコリと笑う朱鷺に、凜も友弥も仕方なしに頷いたのだ。 「で、なんでココに?」 「ん? だって布団がないんだから、仕方ないだろう? それとも凜さんの部屋に行く?」 「いや、それは……ここで、いいです」 夜も更けて、そろそろ寝ようという時刻。友弥の部屋に入ってきた朱鷺に、友弥はため息を吐く。まさか、凜と一緒に寝させるわけにはいかない。 「ちょっと、狭いとは思うけど」 「ううん、私は気にならないよ」 「……そう、ですか」 はぁ、と今日何度目かのため息が友弥の口から零れる。 「そんなにため息を吐いていると幸せが逃げてしまうよ?」 「……」 ニッコリと笑う朱鷺を無視して布団に潜り込む。 「そんな、無視はないんじゃないかなぁ?」 小首をかしげるようにしながら朱鷺も友弥の隣に滑り込んでくる。 「ちょっ! そんな……くっつかないでください」 「冷たいなぁ、友弥さん。それでは私が落ちてしまうよ」 「うっ」 仕方なく友弥はどんどん壁際へと追いやられる。 「ふふ、可愛いね、友弥さん」 「な、なに……ば、バカなことを」 しかし、壁と朱鷺の身体とのあいだでほとんど身動きも取れない体勢になっている友弥は嫌な予感に硬直している。 「いったよね? 道場で。気に入ったって」 「……凜のこと、好きなんですか?」 「ん? 凜さんは友弥さんのことが好きなんでしょう? それくらいは判るよ。私は凜さんとは結婚しない」 その意味はわかるね? と朱鷺の声が低く囁く。 「んっ!?」 「……フっ」 突然のことに声もなく硬直している友弥からそっと顔を離して朱鷺は小さく笑う。 「私が好きなのは、凜さんじゃなく、友弥さんだよ」 こんなことをしたいくらいには、ね。そう妖しく耳元に囁いて朱鷺の手が友弥の腰を抱き寄せる。 「え、あの……朱鷺、さん?」 「ふふ、震えてるの? 可愛いね」 もうなにがなんだか判らない展開に友弥の思考はついて行けない。 「え、や……あの! やめてください!」 やめて、と言って止めてくれるようならこんな展開にはなっていない気がするけれど、それでも言わずにはいられない。背後から抱きしめられていて、友弥を拘束しながらも朱鷺の手は易々と友弥の肌を撫でていく。 「なんで? 止められる方が辛いんじゃないのかな?」 そう言って朱鷺の手が友弥の中心をそっと撫で上げる。 「うわっ!」 服の上からそっと触られただけとは思えないくらいの感触に友弥は思わず声を上げる。 「ね? もうすっかり堅くなってる」 「で、でも……あの、こういうのは……その……」 「大丈夫、ちゃんと悦くしてあげるからね?」 言うと朱鷺はスッと手を友弥の下着の中に潜り込ませる。 「やっ、あのっ」 「うん」 ダイレクトに敏感な箇所を握り込まれて友弥は初めて他人に触れられる性感に戸惑ってしまう。 「人に触れられるのは初めて?」 「あたりまえっ……んんっ」 緩く擦られるそれは決して性急な動きではないが、その緩慢さがかえって友弥をいたたまれなくしている。 「大丈夫、素直に感じていればいいからね?」 朱鷺はどうやら止める気はまったくないらしい。友弥にしてもこんな事をされているのに何故か抵抗しきれない自分に戸惑いを感じる。決して強い力で押さえ込まれているわけではない。本気を出せばふりほどけるのではないか、と焦る気持ちはあるのになぜか身体に力が入らない。 「可愛いよ、友弥」 いつの間にか、さん、が取れて呼び捨てだ。もっとも朱鷺の方が年上で、しかも本家の次代当主なのだから呼び捨てでもかまわないのだろうが。ただ、呼び捨てにされたその声が妙に甘い気がしてしまうのが恥ずかしい。 「ん……もっ、やめっ!」 緩く扱きながら先端の敏感な部分を指先で撫でられるとビクビクと躰が震えてしまう。背後から首筋にかかる吐息にすら肌をざわつかせられて友弥は自分の反応に戸惑い、どうしていいか判らなくなってしまう。 「そんなに可愛い反応をされて、私が止められると思うかい?」 ギュッと抱き寄せられて、腰の後ろに堅いモノを押しつけられて、友弥はビクンと身体を震わせる。それがなにか、なんて言われなくても判ってしまう自分が哀しい。 「やっ、でも……その……」 「友弥の中に入りたくて仕方がない」 あ……熱い囁きが耳元で吐かれると、朱鷺の手の中で友弥のそれがビクンと反応した。 「友弥も、私を欲しいと思ってくれているのだね?」 うれしいよ、と朱鷺は小さく微笑んで友弥の体を反転させる。布団の上に組み敷かれるようにしてパジャマを下着ごと脱がされてしまうと、あまりの羞恥に友弥は真っ赤になる。興奮にエレクトした状態の下半身を他人の目に触れされるなんて、初めての経験だ。 「ここ、震えているよ? 恥ずかしいの?」 「あ……あたりまえ、でしょう? こ、こんなのっ……クッっっっ」 友弥の言葉は無視されたばかりか、体をずらした朱鷺に欲望を口に含まれてそれ以上言葉を続けるどころか恥ずかしい声を上げるのを堪えるために必死に声を噛み殺した。 朱鷺の口内は温かくて柔らかく絡みついてくる。唾液のせいか水音がするのがいたたまれない。口唇で緩く扱きあげるようにしながら舌を絡めて先端部分を舐める。時折チュッときつく吸われるとこみ上げる射精感に堪えるのが難しくなってくる。 「あっ……も、もうっ……朱鷺っさっ! あっ」 「ん、我慢しなくてもいいよ、出しておしまい」 先端に口唇をつけたままでそんなことを言われて、くすぐったいような物足りないような感触に腰を震わせてしまった直後。 「あっアアーーーっ」 先端だけ口に含んで強く吸い付かれて、限界を超えてしまった。脈打つそれを根本から絞り尽くすように朱鷺の手が上下している。 「ふぅ、たくさん出たね」 「あ……ごめ」 ごめんなさい、と口の中に出してしまった事への謝罪を友弥が口に出そうとしたその時、朱鷺の指があらぬ場所を掠めた。 「ンっ」 何故朱鷺はそんなところを触るのか。ヌルヌルとした感触がなんなのか。友弥は考えると恐ろしいことになりそうで、わかるけどわかりたくない、と心の中でだけ喚いていた。 「そんなに緊張しなくてもいいよ。痛くないようにしてあげるからね?」 「む、無理、絶対無理!」 「うーん、無理じゃないと思うよ?」 ほら、と朱鷺はツプリと指を友弥の中に突き立てた。友弥の吐き出したモノを塗り込めたせいか、さほどの抵抗もなく指は中に入ってしまう。 「やっ!」 気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。友弥はそれしか考えられない。違和感とどうしようもない排泄感。しかしそれは朱鷺の指が友弥の中でユルユルと動き出すまでだ。 「な……んで?」 「ん?」 気持ち悪いだけだったはずなのに、指が中を探るように動き出すと不思議な感覚が腰の奥から湧き上がってくる。中を探る指に、外を探る指が掻痒感を増させる。 「少し、感じるようになったみたいだね?」 「そんなっことっ!」 ない、と言いたいが、朱鷺の指を締め付ける其処は今はパクパクと勝手に開閉してしまっていてまるで説得力がないことは自分でも分かっている。 指が二本に増えて、三本を楽に呑み込めるようになるまで、そんなにはかからなかった。 「そろそろ、いいかな?」 「あ……はっ……苦しっ」 ようやく、朱鷺の指が抜けたときには友弥はすでに体に力が入らない状態になっていて。両脚を抱え上げられて恥ずかしい体勢を取らされたのにも抵抗らしい抵抗もできなかった。 「挿れるよ、力を抜いて」 いっそ優しい声でそう囁かれて友弥は息を吐き出す。ゆっくりと体重をかけるようにして挿入されたそれは指とは比べものにならないくらいに大きくて苦しいくらいに圧迫感がある。 「そう、息を吐いて……痛くはないね?」 友弥の様子を気にかけながら挿入にはとても時間がかかった。それでも辛抱強く朱鷺は友弥の中が朱鷺の大きさに馴染むのを待つ。 ゆっくりと抽挿が開始されたときには友弥はそれを嫌だとは思えなくなっていて、そんな自分にとても戸惑っていた。 「友弥……愛しているよ」 「……んぁ」 朱鷺から紡がれた囁きに友弥は応えられない。すでに耳に入る状態ではないからだ。 「も……早っ……クぅ」 「友弥……甘い鳴き声は嬉しいけれど、凜さんに聞かれるのは嫌だろう?」 ちょっと我慢してね? そう言って朱鷺は友弥に口づける。喘ぎごと吸い取ると、腰を大きく動かして友弥の中を擦った。 「私も、もう……」 大きくスライドして快感を追う。友弥の勃ち上がった欲望に指を絡めるのも忘れない。友弥の内部のいいところを抉るようにしながら朱鷺は自分も絶頂に向けて激しく腰を打ち付ける。 「ぁ! イ……くっっ」 友弥が白濁を迸らせると連動して収縮するのにあらがえず朱鷺も友弥の中にぶちまけた。 「は……ぁ」 荒い呼吸が重なる。友弥はつい今し方までの行為に比べればむしろ優しいとさえ言えるその口づけの中でようやく意識を手放した。 「ん……」 「おはよう、目が覚めた?」 「……おは、よう……ございます?」 覚醒しきれない頭で友弥は挨拶を返すと、ようやく夕べの痴態が思い出されてカーッと頬に朱を上らせる。 「痛いところはない?」 「あ、大丈夫、です」 たぶん。本当は少しあらぬところがズキズキする気もしないでもないけれど、そんなこと言えるわけがない。 「そう?」 言いながら朱鷺は友弥に顔を近づけてくる。 「んっ」 チュッと小さく音を立てて唇に吸い付かれても友弥は抵抗できない。そんな自分に更に戸惑いがつのる。 「友弥は朝から元気そうだね。夕べあんなに搾り取ってあげたのにね」 クスクスと朱鷺が笑うと友弥は真っ赤になってしまう。 「やっ、これは……その……朝だし、生理現象……」 「うん、そうだね」 私も、ホラ。朱鷺が友弥の手を取って自分のそこに押し当てる。すでに袴姿の朱鷺がそんなことになっているのにびっくりする。 「わっ! な、なんかおっきくなってる気がするんですけど……」 「ん? そうだね。友弥が触ってくれてるから」 ニッコリと微笑まれてもうすら寒い気がするのは気のせいだけじゃないだろう。 「わわっ」 身震いしている間にパジャマのズボンと下着が少しだけずらされて、半分勃ち上がり掛けている局部を露出させられている。そこに朱鷺の手が掛かってユルユルと動かされれば先刻は驚きに跳ね上がっただけの鼓動が違う理由で静まってくれなくなる。 「なんだか困ったことになってしまったね、出さないと我慢できなさそうだよ」 「困ったって……これは、朱鷺さんが……」 「うん、そうだね。だから私が責任を持って友弥を気持ちよくさせてあげるよ」 「いえっ、あの……結構ですか、ら」 「うん?」 そんな会話の間にも朱鷺は自らの股間をくつろげ友弥の手ごと握り込んでいる。 「友弥が触ってくれていると思うと暴発してしまいそうだよ」 クスリと笑って朱鷺は友弥の腰の上に馬乗りになる。 「大丈夫、怖がらないで。昨日の今日だからね、無理をさせるつもりはないよ」 言うと朱鷺は友弥と自分の尖塔をまとめて友弥の手を添えたままその大きな手に包み込む。クチュッと小さな音が立って友弥はあまりの羞恥に顔を上げることも出来ない。重ねられた朱鷺は熱くて、でも手に触れる自分自身も負けないくらいに熱い。 「んっ……」 自分を追い詰めているのが自らの手とは思えないくらいに興奮している、と思う。朱鷺の手と熱に煽られるように昂ぶっていく。 「あ……朱鷺、さっ……」 「もうイキそう? いいよ、イッて」 私も……朱鷺の手が先端をひっかくように刺激すると、もう抑えることは出来なかった。熱い固まりが突き抜ける。 「……ん、お兄ちゃん! 朝食の準備が出来ています、そろそろ降りてきてください」 ビクビクと余韻に震えていると、凜が階下から呼ぶ声がする。 「あ……」 「はい、すぐに行きます」 整わない呼吸の下で、とっさに凜からの呼びかけに応えることができない友弥に変わって朱鷺が返事をする。 「ふふ、すごいタイミングでしたね」 「……最悪」 そのほとんどは朱鷺が手で受け止めてくれたけれど、ヌルヌルしたものが下腹部を濡らしている。 「少し、汚れてしまいましたね」 「うっ」 はい、と朱鷺がティッシュを無造作に掴んで大まかにだが拭いてくれるとそれでもずいぶんとマシになった。 「濡れタオルとかあるといいんですけどね」 「あ……ウェットティッシュが」 「ウェットティッシュ? それは一体……?」 「あー」 説明するのが面倒で、友弥は身体を起こすと机のヨコにあるウェットティッシュを自分で引き出して、まだ少し違和感のある股間をぬぐう。ついでに数枚朱鷺にも手渡してやると、友弥の様子を見て同じように朱鷺も後始末をしている。 「これは、すごいね! ちり紙が濡れている!」 「……」 一体いつの時代の人だ、と友弥もようやく朱鷺の反応を笑った。 「ああ、友弥が笑っている。やはり笑顔はとても可愛いね」 「な、なに言ってるんですか! 男に可愛いなんて……」 「うん、でも……」 バターン! 「お兄ちゃん! いつまで待てば降りてくるんですか!?」 仁王立ちになった凜が部屋に入ってくる。 「あ、ゴメン……今すぐ降りる、よ」 「あぅ……じゃあ、急いでくださいね? ご飯、さめちゃいます」 「うん、ゴメン。着替えてすぐ行くから」 友弥は凜が怒っているのではないことにホッとしながら、急いで着替える。 「あ、ほら、朱鷺さんも! 行きますよ」 「はいはい」 促す友弥に頷いて朱鷺も一緒に階下へと降りる。昨日に続き今朝もいい思いをさせてもらったので朱鷺は上機嫌だ。 「ところで、昨日の話なんだけど」 食事を終えて朱鷺が切り出すと、凜の表情が引き締まる。 「やっぱり私としては凜さんとの婚約はなかったことにしてもらおうと思っているんだけど……どうかな?」 「それは、そうしていただけると私も助かります」 「そうだね、それで代わりと言ってはなんだけど……」 意味深に、とても意味ありげに、そこで朱鷺が友弥を振り返る。 「友弥さんを、本家に連れて行きたいと私は思っている」 「……え?」 「なっ、なにを!」 一体何を言い出すのか、と友弥が焦る隣で凜は唐突な台詞に?を表情に乗せるばかりだ。 「だからね、凜さんじゃなく、友弥を婚約者として……」 「あわわわわ!」 友弥は大あわてでそれ以上朱鷺に話をさせまいと朱鷺の口をふさいだが、あいにく凜にも聞こえてしまったようだ。 「……どういう、つもりなんです? お兄ちゃんは男ですよ?」 「うん、そうだね。でも好きになってしまったんだからしかたがないよね」 「そんな、勝手な」 凜は憤慨しているが、友弥は怒る気になれない。実際、あんなことも許してしまったし、それより男同士で無理だとわかっているにもかかわらず好きだ、と言ってくれる朱鷺の気持ちがうれしかったのかも知れない。 「そ、そんなこと……両親が許すはずがありません!」 「え? そうかな? うちの両親は大丈夫だと思うし、それに藤宮の方も……大丈夫な気がするなぁ」 「あう……」 言われてみれば。女性向けライトノベル作家なんてことをしているあの人が反対するはずがないような気がする。 「というか、あの人が一番喜びそうな気がするのは……気のせい?」 「じゃないと思いますよ、お兄ちゃん」 「うううっ」 「というわけで、友弥が僕の婚約者ってことで」 ニッコリと笑う朱鷺。 「ダメ! ダメダメダメです! お兄ちゃんの婚約者候補の私を無視しないでくださいー!」 「と、言われても。ねぇ?」 「え……あの……」 僕に振らないで欲しい、と友弥は真剣に思う。 「凜さんと私、友弥はどちらを選ぶんだい?」 「ど、どっちと言われても……」 凜は友弥にとっては大切な妹で。朱鷺はあんなことまでしてしまった仲で。 「友弥?」 「お兄ちゃん?」 二人が友弥の答えを聞きたくて擦り寄ってくる。 「あ、あの……少し離れて……」 ちゃんと言うから、離れて、と友弥が言うとようやく二人は少しだけ距離をとってくれる。 「その、今まできちんと考えなくてゴメン。凜、凜はとても大切な妹だけど……妹としか思えない」 「お兄ちゃん……」 ゴメン、と友弥はもう一度頭を下げる。 「うう、ひどいです。でも……それがお兄ちゃんが出した結論なら、しかたない、です、よね」 半泣き状態で、それでもそんな風に言ってくれる凜の肩を抱き寄せて、ポンポンと頭を撫でてやる。 「ずるいです、そんな風にされたら怒れないじゃないですか」 「うん、ゴメン」 ゴメン、と何度も繰り返すと、凜の身体から力が抜けてくる。 「コホン、ちょっとくっつきすぎじゃないのかな?」 「妹ですよ?」 「しかし、だね。友弥は私の婚約者なのだし」 「……まだ候補のくせに」 小さく凜がつぶやく。 「許婚者候補、ということは認めよう。でも婚約は友弥の了解があればいいんじゃないかな?」 「お兄ちゃん!」 またしても二人に言い寄られる羽目になる友弥。 「はぁ……言わなきゃ、ダメ……です、よね?」 「……」 凜と朱鷺の視線が突き刺さる。 「……結婚っていうのは、正直よくわからないけど……朱鷺さんのことは、嫌いじゃない」 「嫌いじゃないって……微妙な表現ですね」 「好きって言うわけでもないってことですよね? お兄ちゃん」 「いや、その……たぶん……好き、なんだと……」 後半だんだんと声が小さくなってしまうのは凜の怒りの形相のためだ。 「で、でもお兄ちゃん? 男同士で子どもとかどうするんですか? 凰火を嗣ぐ人がいなくなってしまいます」 「それは大丈夫なんじゃないのかな? 確かに私は次期頭首だし、友弥が私と結婚してくれれば私の子どもはできないけど、本家には私以外にも凰火の血を嗣ぐ者はたくさんいるわけだし、力のある者が嗣げばいいと私は思うんだが」 「それは……」 「それにね、確かに色々と問題はあるかも知れないけれど、私はもう友弥がいないと生きては行けそうにないよ」 「朱鷺さん……」 「そこっ! ポーッとしない!」 凜の鉄拳が突き刺さる。 「痛いよ、凜」 「というわけで、今から本家に行ってきたいんだけど」 「……」 ムッとした凜の頭を、今度は朱鷺が撫でる。 「むぅ、それはお兄ちゃんしかダメです」 「そう? ゴメンね、でも私も凜さんの兄になる予定だから」 「そ、それでは……し、しかたないですね」 「……僕の意見はこの場合関係ないんですね?」 「ん?」 なにか言ったかい? と朱鷺がニコリと笑う。友弥はハァとひとつため息をつく。朱鷺が自分を選んでくれて、そして確かに自分も朱鷺を選んだのだから。 「じゃあ、支度をしてきます」 立ち上がって、ひとつ大きく深呼吸をする。 昨日から怒濤のような激流に飲み込まれている気がする。流されるだけじゃなく、自分できちんと泳いでいかなくちゃ、とパンッと気合いを入れながら思う。きっとあの母のことだから、結婚だって承諾しかねないし、母が諾と言えば父が否やを唱えることなどあり得ない。 1ヶ月前、結婚相手を見つけろ、と言われたのがなんだかもうずっと遠い昔のことに思える。 「ん?」 隣に立つ朱鷺を見上げて、友弥は微笑む。 「好き、だよ?」 「私も、友弥を愛しているよ」 なんだか、それだけでいいような気がしてきた。 藤宮のこととか、本家のこととか、男同士なのに、とか男なのに嫁って立場は一体……とか。色々色々考えなくちゃいけないことはあるけれど。 「じゃあ、行こうか、友弥」 「はい」 朱鷺の目を見たあの瞬間から、もしかしたら囚われていたのかも知れない。この強い瞳にいつまでも自分を映していて欲しい、と。 fin |
よくばりサボテンっす。友弥は受だと思いますが(これに反対する人は少ないかと(笑))朱鷺さんがもしホントに男だったら、凜より友弥に行っちゃったりして〜vv きゃー![]() えーと。ホモなのにエロ度高くてごめんなさい(笑) もとが18禁ゲームなので、つい(笑) |