Change! 2
「だから……」
 ーンコーン
 先生が黒板に向き直ったところで終業のチャイムが鳴る。
「っと、じゃあ今日はここまで」
 パタンと教材をまとめると、ハイヒールをカツカツと響かせて、子安みむらは教室を背にした。
「おっと、日直は後で職員室まで来るように」
 もうざわつきはじめている生徒の方を振り返って言うが、入り口付近の生徒数人にしかきこえなかったかも知れない。

 職員室。
 みむらは机に向かって、先程の授業で集めておいた課題に目を通している。赤ペンを片手に無表情でチェックしていく。
 職員室に残っている先生は案外少ない。部活動の指導に行く先生、そうじのチェックに行く先生、教科毎の会議に出ている先生などがいて、けっこう出払っている。
 ガラッ。
「失礼しま〜す」
 いきおいよく扉を開けて、女生徒が頭を下げる。きょろきょろと辺りを見回して先生の姿を探す。
「花村さん」
 こっちこっち、とみむらがひらひらと手を振って紀子を呼ぶ。
「あ、先生。なんですか?」
 ちょっと待って、と作業途中のノートをまとめて机の引き出しに片づけると、みむらは立ち上がる。
「ちょっとプリントの整理手伝って欲しいのよ」
 印刷はしたんだけど、とみむらは紀子を従えて職員室を後にする。もちろん、周りの先生方にも聞こえるように計算している。
「職員室にはあまり物を置けないから、準備室の方にほとんど置いちゃってるのよね」
 特別教室のある棟は普通の教室のある棟とは向かい合わせに建っていて、その2つが事務室や職員室、図書館等のある棟でつながっていて、学校全体はコの字型になっている。
 化学室は2階の端で、職員室とは反対側にある。2人は廊下を歩きながら、他愛もない話をする。
 廊下は中庭に面しているので、初夏の日差しがまぶしい。つきあたりにある準備室は中庭側と、後者の裏の林の方とに窓がある。
 みむらは紀子を準備室に招き入れると紀子にパイプ椅子をすすめた。
「えっと、プリントは? 先生」
 紀子は机の上を見回して、そらしきものが何もないのでけげんな顔で尋ねる。
「あら、ふふ」
 あんなの口実よ、とみむらは微笑む。
「2日も続けて呼び出すなんて、アヤシいでしょ?」
「あっ」
 紀子は、そういうことか、と遅ればせながら頬を染める。
 みむらは自分も椅子に腰掛けて、紀子の顔をのぞきこむ。
「……昨日、すなおにはどこまできいたの?」
「えーとォ、どこまでって言われても」
 紀子はみむらに間近で見つめられて居心地悪そうに視線を宙に漂わせる。
 みむらは紀子の様子に気づくと、手を離し、中庭側の窓に歩み寄る。
「私が特殊な体質だっていうことは、きいたわよね」
 みむらの横顔に見とれていた紀子が、?の表情を顔にのせる。みむらの話を聞いていなかったのだ。
「すなおと、私が同一人物だってことよ」
「あ、はい。3人の秘密ですよね!」
 真剣な顔でうなづく紀子に、みむらは苦笑する。
「昨日の、私との約束は、生きてる?」
 約束って、何か約束なんかしたっけ? と紀子はちょっと考えている。大きな瞳がクリッと動いて、可愛い。
「私のものに、なってくれるって言ったわよね」
 ポッ、と紀子がほおを染める。
「うん」
「あの時は、すなおのこと、しらなかったでしょ? だから、それでもいいかってこと、紀子の口から聞きたかったのよ」
「あのね、あのね、先生、私のこと、ノンちゃんて呼んで? すなおくんはそう呼んでくれたの……あ、でも、もしかしてすなおくんは私のこと嫌いなのかなァ?」
「どうして?」
 ききながらみむらは紀子のほおに手をやる。
「だって……私のこと……あんまり……見て、くれなかった、し……」
 くちびるをなぞるみむらの指の感触に紀子の言葉はとぎれがちになる。
「大丈夫よ、私がこれだけノンちゃんのこと、気に入ってるんだから。すなおもタイプだと思うわ」
 言いながら、口づける。口唇が触れるだけの、でも長いキス。
「ただ、私とちがってすなおはオクテだから」
 みむらは言って苦笑したが、それはもしかしたら、たったそれだけのキスで陶然となっている紀子に対してだったかも知れない。
「ノンちゃんはすなおのことが好き?」
 ん、と小さくうなづく。
「すなおと、こんなことしてもいいと思う?」
 言いながらみむらは紀子の首筋に口唇を這わせる。鎖骨までゆっくりと降りてくるとセーラー服の前をはだけながら肩へと舌をすすめる。
「う……んッ……っ」
 だんだんと言葉を発するのがつらくなってきている紀子が椅子から崩れ落ちそうになると、みむらはやっと彼女を離す。
 ちょっと待ってネ、と前置きしてみむらは棚から綿毛布を取り出して、床に広げた。
「昨日は背中痛そうだったから、ね」
 ゆっくりと紀子を毛布の上に横たえながらみむらが言う。
「せん、せ
 紀子がみむらの首にしがみつく。
「すなおとスルと最初は痛いのよ? 判ってる?」
「ん、……だい、じょ……ぶ」
 じゃあ、とみむらは愛撫の手を休めずに言う。
「すなおに、変わるわよ、いい?」
 紀子はもう、頷くことさえできない。
 みむらは、白衣を脱いで紀子の裸体に掛けると、その下の着衣も脱ぎ捨てる。紀子の上に重なるようにして、メガネを外す。
「!!」
 紀子に重なるようにして固まっているのは子安すなおだ。みむら先生の顔つきはそのまま、身体だけが男の身体になっている。
 目のやり場に困ってすなおがあわてて起きあがろうとするのを下から紀子がしがみつく。
「や……ん、止めないで」
 高校生とは言え、その最中の声でささやかれて反応しない男はいない。
「そ……そんなこと言ったって」
 どうしろって言うんだ! こんなとこでほおりだしやがって、みむらの奴!
 すなおの怒りは自分の別人格であるみむらに向いている。しかも、今回は自分も全裸なので隠しようがない。
「お、願い……すなお、くん……が、ほしっ……っの」
 紀子がすなおの手を自分の胸に導く。
 けして大きくはないが、今までの行為で体温が熱い。すなおの掌に硬くとがった乳首があたる。やわらかく揉みしだくと、紀子の声が小さくもれる。荒い呼吸に胸が大きく上下する。
 口に含むと甘い香りがした。舌先で転がすと紀子がもじもじと太ももをこすりあわせる。
「本当にいいの?」
 すなおはいいながら、右手を紀子の足の合わせ目に潜り込ませる。
「くっ……」
 紀子が恥ずかしさのあまりに両手で顔を隠したので、すなおは彼女に横を向かせると後ろから抱きかかえる形で乳房と秘所を可愛がる。すなおからは紀子の表情は見えない。首筋にキスを繰り返しながら、すなおは、このまま惰性で紀子を抱いてしまっていいものか考えている。
「いやっ!」
 突然紀子がすなおの手から離れる。
「あたし、あたし……すなおくんに、抱いて欲しいのに……あたしだけ先にイカさないで……」
 うつぶせになって、すなおから逃れた紀子の声は震えていて、泣いているように聞こえる。
「ノンちゃん……」
「ノンちゃん、ごめん」
 長い髪の毛にキスをする。愛しさがこみ上げてくる。
「力を抜いて……、痛いかも知れないから……」
 紀子の顔を見つめながら、正常位でつながった。
 初めての紀子を気遣って、あまり動かなかったが、彼女の表情をみていると、幸せな気分になれた。
「痛かったら、言うんだよ?」
 すなおは、ゆっくりと腰を動かしながら、右手を紀子の薄いヘアにあてがう。腰の動きでクリトリスにあてた親指がマッサージするように動く。



「ありがとう、すなおくん」
 制服を着終えた紀子がすなおの腕にぶらさがるようにして甘えている。
「あたしね、みむら先生もすなおくんも大好きだから、うれしかったよ?」
 でも、学校でHって、スリルあってちょっとイヤラシイよね、と笑う。
 すなおは、こんなハズじゃなかったのにな、と思いながらも紀子の重みを心地よく感じていた。